母のために開いた着物レンタル店&フォトスタジオ
何から何まで反りが合わない母親から離れるために大阪から東京に出て30年。業界でも知られる商業フォトグラファ-となった大山雄大さんは、50歳になったのを機にすべてを置いて戻ってきた。老いてきた母親と過ごす時間を持つべきだと考えたからだ。着物が好きで、着付けが得意な母親の生きがいになることを、自分の生業と組み合わせてできないか。考えたのが着物レンタルとフォトスタジオ。どうせなら京都、それも祇園で、と物件を探して建仁寺の北隣に探しあてた。
京都は着物レンタル店の激戦地区で、すでに町中に着物姿の外国人観光客が溢れかえっていた。着物とは言えないようなシロモノを、着崩れたまま歩く姿も多々。「京都のまちを歩くなら、上質の着物をきちんと着て欲しい。おしゃれな大人の女性が、ちょっと着物を着て出かける一助になるような店にしよう」と考えた。母親のコレクションなど計300着のストックの中には100万円以上する着物もある。それでも帯や小物など合わせて一式でレンタル料は着付け込み32,400円。安いプランだと同じく5,300円で楽しめる。きちんと対応するため、日に20人限定だ。着付けはもちろん母親担当。コーディネートはインテリアコーディネーターだった妻・康子さんが行う。基本を外さず、しかし斬新。色合いや柄、小物との調和にセンスが光る。
「結婚式といったフォーマルシーン向けよりも、普段に街歩きするための着物をそろえました。日本のタンスに眠っている着物の価格総額(購入時)は計30兆円と言われています。自宅にある着物を取り出して着てみたくなったという声を聞くと、うれしくなります」と雄大さん。
コネも人脈も皆無だった場所で3年目を迎えられた。リピーターも増えてきたが、まだまだ広く知られているとは言い難い。京都人は「賢い(京都で「お得で信頼できる」という意味で使う)」と、ひいきにする店は、他人にはあまり教えないのだ。
※京都着物レンタル 祇園KIHARU(きはる)&PHOTO → https://kiharu.kyoto/
※2019年2月閉店
◆Writing / 澤 有紗
著述家、文化コーディネーター、QOL文化総合研究所(京都市上京区)所長。
京都、文化、芸術、美容、旅や食などなどをテーマに雑誌・企業媒体誌などの編集・執筆を担当するほか、エッセイなどを寄稿。テレビ番組や出版のコーディネート、国内外の企業の京都、滋賀のアテンドも担当。万博の日本館にて「抗加齢と日本食」をテーマに食部門をプロデュースするなど、国内外での文化催事も手掛ける。コンテンツを軸に日本の職人の技や日本食などの日本文化を「経済価値に変える」「維持継承する」ことを目的に、コーディネート活動を行っている。
主催イベントとして、日本文化を考える「Feel ! 日本 -日本を感じよう-」と、自分を見つめ直しQOLを高める「Feel ! 自分-QOL Terakoya Movement ? 」を定期開催。
https://www.qol-777.com