認知症。「自分は大丈夫」なんて、思い込んでいませんか。年を重ねれば誰もが直面する可能性がある“頭の生活習慣病”ですが、できれば予防したいもの。そこで一般社団法人日本認知症予防協会(大阪市)の理事、佐々木誠さんに話を聞きました。(岡井哲弥)
認知症予防の可能性
「認知症とはどんな病気?」と聞かれて、ハッキリと答えられる人は実は少ないでしょう。認知症とは一言でいえば脳の病気です。大きくは「アルツハイマー型」 「脳血管性」 「レビー小体型」 「前頭側頭型」認知症といった四つの類型があります。障害が発生した脳の部位により、症状が違ってくることがわかっており、いわゆる「もの忘れ」などの老年性のものとは異なります。
なぜこれほど社会の関心を集めるまでに増えたのでしょうか。大きな要因の一つに、長寿化があります。要するに、昔は発症する前に亡くなっていた人が多いと考えられています。
今は「誰でも認知症になる可能性があるんだから、なったらなったでしょうがない」と考える人も多いようですが、放っておいていいのでしょうか。予防できるのであれば、それに越したことはないでしょう。認知症の前段階であるMCI(軽度認知障害)までであれば予防が期待できる、それが私たちの考えです。
四つの予防策
認知症は、生活習慣と関係が深いことが分かってきています。そこで、私たちは四つの予防策を提案しています。 ①食生活の改善=バランスのよい食事を。歯磨きなど、何げない無意識の生活習慣が重要 ②頭のトレーニング=脳を働かせることで、血流がよくなる。過去の出来事を思い出すだけでも効果的。常に新しいことに挑戦を ③運動習慣=週に2~3回はウォーキングを。血行を促すとともに運動機能の維持・向上にも有効 ④睡眠=体も脳も休ませる質のよい睡眠には、寝る前のテレビやスマートフォンはNG。太陽光とともに起きるリズムをしっかりと
これら四つはいずれも生活習慣病の予防と通じるものです。しかし、四つすべてを完璧に実践する必要はありません。できることから始めればいいんです。嫌々やっても長続きしません。たとえば、カラオケが好きなら家族や友人たちとワイワイやればいい。私の父親はパソコンの前に陣取って、オンライン上の相手とのマージャンに熱中しています(笑)。認知症予防にある意味、一番重要だと思うのは、そこですね。「人とのつながり」だと思います。
(監修:一般社団法人日本認知症予防協会 理事/にしかわ在宅クリニック医師 西川泰章)