「オペラ」と聞いて、私にはちょっと……と感じる人もいるかもしれませんね。音楽、舞台、美術などあらゆる美の粋を集めた“ 総合芸術 ”は、華麗な世界を一度に満喫できるとも言えます。実は、阪神間・北摂エリアは既に国内屈指のオペラ発信地。それなら思いきって楽しんじゃいませんか。(鈴江元治)
街の風物詩 オシャレのチャンス
「オペラはアンティークなミュージカルだと思ってください。堅苦しく考えることはありません」と話すのは、上方オペラ工房を主宰する伊原敏行さん。もとは16世紀末にイタリアの貴族が余興の一つとして芝居に歌を付けたのが始まりで、本来は関西人にとっての落語などと同じ娯楽の一つだと力説する。「晴れの場の雰囲気に乗っかって、オシャレを楽しむチャンスに利用しては」と伊原さんはすすめる。
宝塚歌劇や吉本新喜劇を生んだ関西から新たなオペラを発信しようと兵庫県立芸術文化センター(西宮市)が、世界的指揮者・佐渡裕氏を芸術監督に迎え、自主制作を始めたのが2005年。「蝶々夫人」 「カルメン」 「こうもり」など初心者にも親しみやすい名作を毎年上演し、これまでに延べ20万人以上を動員した。ロングランの利点を生かし、価格を抑え、街の風物詩としてファンを拡大している。
人間ドラマと華麗な歌手にも注目
「日本、特に関西の出演者のレベルアップはめざましい。目の肥えた関西のお客さんが出演者をしっかり育てている。日本語字幕も進化して、とても見やすくなっています」と伊原さんは話す。
高尚に見えるストーリーは実は興味深い人間ドラマがほとんど。伊原さんお気に入りの「愛の妙薬」は“ 惚れ薬 ”を巡る男女の大騒ぎ、世界で最も人気があるオペラの一つ「椿姫」は純情な青年と高級娼婦の禁じられた愛が描かれる。7月に西宮で上演される「魔弾の射手」の作品観は「射撃の名手がスランプで追い詰められるファンタジーサスペンス」と伊原さん。
そんな物語にフルオーケストラによる生演奏が付き、歌手たちが磨きに磨いた歌声を響かせ、華やかな衣装やセットとともに非日常へ誘う。「一流の芸術は心を動かします。インドのカレーが日本で大きく発展したように、食べず嫌いの人もオペラを味わってみては」
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