大切な何かを思い出させてくれるフランス映画「子どもが教えてくれたこと」7/14公開

 3歳と10歳の2人の娘を難病で亡くした経験を持つパリ生まれの女性ジャーナリスト、アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアンが初めて脚本・監督を手掛けたドキュメンタリー映画「子どもが教えてくれたこと」が間もなく公開される。

 登場する5人の子どもたちはみんな難病を患っている。だけど、その笑顔は底抜けに明るく、話す言葉はとてもクレバーで明快だ(時には哲学的に思えるほどに)。

アンブル ©Incognita Films – TF1 Droits Audiovisuels
カミーユと母親と医師 ©Incognita Films – TF1 Droits Audiovisuels

 

 

 

 

 

 

 小さな水色のリュックをいつも背負っている9歳のアンブルは、お芝居が大好きな妖精のようにキュートな女の子。彼女は動脈性肺高血圧症で、リュックの中には狭くなった肺動脈を広げる薬剤を定期的に注入するポンプが入っている。

 サッカーに夢中の5歳半のカミーユには骨髄の病気、神経芽腫がある。「赤ちゃんだった時にママが全部説明してくれた」自分の病気のことをちゃんと理解しながら、パリ郊外のサッカーチームに所属し、パパと毎日サッカーの練習を欠かさない。

シャルル(左)と親友のジェゾン ©Incognita Films – TF1 Droits Audiovisuels

 8歳のシャルルは「チョウの羽のように弱い皮膚」を保護するため全身を包帯で覆っている。表皮水泡症という病気で、平日は病院で親友のジェゾンと一緒に過ごし、院内のことは知り尽くしている。看護師に介助されながらの入浴シーンの撮影は、本人が自ら望んでカメラを招き入れたそうだ。

 腎不全で腹膜透析をしている7歳のイマドは、治療のため数年前にアルジェリアから移住してきた。治療につきそう父を気遣う言葉にホロリとさせられる。

 植物に詳しい8歳のテュデュアルも神経芽腫。両目の瞳の色が違うことを、3歳の時に行った腫瘍摘出手術のせいだとカメラに向かって説明する。ベッドの上でつらい治療に耐える姿を見守る祖母との会話が温かい。

アンヌ=ドフィーヌ・ジュリアン●1973年生まれ。大学でジャーナリズムを学び、新聞や専門誌などに幅広く執筆。2007年に3歳で他界した娘タイスとの日々をつづった「濡れた砂の上の小さな足跡」(翻訳本は13年講談社刊、訳:平野暁人)を11年に出版し、35万部を超えるベストセラーに。フランス本国では13年に家族のその後を描いた作品も出版。現在は苦痛緩和ケア財団の科学委員会のメンバーを務め、夫と2人の息子とパリに住みながらフランス各地で講演活動を行っている

 6月下旬にキャンペーンのため来日したジュリアン監督は、それぞれの子どもたちの撮影には10日間ずつかけたと話した。主にクラウドファンディングで募った制作資金を基に、2014年7月に撮影をスタート。トータル撮影時間が110時間を超える中で、編集に5カ月をかけて、ピュアな表情と珠玉の言葉が詰まった80分の作品が誕生した。

 「子どもたちは自分が病気であることをよく知っている。そして私に、たとえ病気になっても幸せになることを妨げるものは何もないと教えてくれた。大人は時間軸で物事を考えるが、子どもたちは本能に従って、今を大切にピュアに生きている。それは子どもにとってとても自然な生き方で、それで一人の人間として開花することができる。彼らは『C’est ma vie(これはボク<ワタシ>の人生)』という言葉をよく使っていたが、パフォーマンスを上げることばかり求められているフランスや日本の大人たちは、子どもたちの姿に学び、何が大切なのかをもう一度問い直す必要があるだろう。自分の中の子どもの部分に気づいてほしい」

 

 【公開情報】7月14日(土)からシネ・リーブル梅田、シネ・リーブル神戸、 7月21日(土)から京都シネマ で公開。




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