ここ数年の夏の猛暑。熱中症や夏バテに注意をするようになった人も多いのではないでしょうか。健康な体のためにはバランスのとれた食事が不可欠。7月1日(月)に吹田市の北千里から岸辺に移転する国立循環器病研究センター(以下国循)で、おいしい減塩(かるしお)食に取り組んでいる栄養士の平野和保さんに、体調を整える食事について教わりました。(畑 美佑)
1日1リットル以上の水分で脱水予防を
熱中症予防には、塩分を意識してたくさんとると良いと思っている人が多いのですが、これは間違いです。もちろん塩も体に必要な栄養素。しかし、夏場に冷房の利いた部屋で過ごし、3食普通の食事をしていれば、汗をかいても塩分は不足しません。それよりも大切なのは脱水予防に水分をしっかりとることです。持病のない人であれば、食事から摂取する水分のほかに水かお茶を1日1リットル程度飲むと良いでしょう。スポーツ飲料や経口補水液は激しい運動をする人や、病気などで食事をとれない人に適しており、普通の人には塩分や糖分が多すぎます。
塩分のとりすぎは様々な病気を引き起こす要因に。厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量(男性で8グラム未満、女性7グラム未満)を目標にしましょう。
疲労回復にはビタミンB1が最適
食事では、玄米や大麦などの全粒粉穀物、海藻、夏野菜などカリウムを豊富に含む食材を食べることを意識すると良いですね。疲労回復に良いビタミンB1もしっかりとりたい栄養素。ビタミンB1は、主に肉や魚に含まれますが、ずば抜けて含有量が高いのが豚肉です。しゃぶしゃぶなどにして、大根おろしや緑の野菜と一緒に食べましょう。
食事のバランスを整えるために国循が勧めているのは、毎食ごはん以外のおかずで、野菜とたんぱく質の両方をとること。食欲がない時は、おかゆでも良いのですが、ササミや卵などを加えて炭水化物だけにならないことが大切です。たんぱく質にはうまみ成分もあり、おいしさもアップしますよ。食事環境を整えて、元気に夏を乗り切りましょう!
オクラはアオイ科の植物の若いさや。アフリカ原産で、幕末にアメリカから入ってきたころは、糊(のり)として利用していたようです。食用として栽培が本格的に始まったのは昭和50年代。歴史は浅いですが、今では沖縄、鹿児島、高知など暖かい地方で栽培され、夏に欠かせない食材です。
生、ゆでる、炒める、揚げるなど調理法が多彩で、夏バテ予防に役立つねばねば成分のペクチンとムチンが豊富。中でも多糖類のペクチンは水溶性食物繊維として整腸作用があり、コレステロールの排出を助けるうえ、熱に強いので調理法を選びません。さらにβカロテン、カリウム、マグネシウム、亜鉛なども豊富。納豆や山芋などと合わせた料理で夏の暑さを乗り切りましょう。
レシピ
~豚しゃぶのおろしポン酢添え~
国立循環器病研究センター(国循)がすすめる「かるしお(減塩)」レシピ。その中から、疲労回復に良いビタミンB1を豊富に含む豚肉を使ったメニューを1品紹介しましょう。
(出典:「国循の美味しい!かるしおレシピ」セブン&アイ出版刊)
【材料】2人分 | |
豚ロースしゃぶしゃぶ用肉 | 60g |
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パプリカ(赤) | 5g |
しめじ | 10g |
みつばの葉 | 2g |
グリーンアスパラガス | 10g(約1本) |
キャベツ | 30g |
大根 | 60g |
おろししょうが | 2g |
下ゆで用八方だし | 適量 |
サラダ油 | 2ml |
塩 | 0.12g |
こしょう | 少々 |
A | |
砂糖 | 0.6g |
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ゆずのしぼり汁 | 2ml |
酢・しょうゆ | 各2ml |
だし汁 | 1ml |
- 【作り方】
- ①パプリカは縦に7mm幅の千切り、しめじは小房に分ける。みつばは1cm長さに切り、アスパラガスは縦半分に切ってから斜め切りにする。それぞれ色よくゆでて水にとり、水気を切る。キャベツは2.5cm角に切ってかためにゆで、水にとり、水気を切る。
- ②大根はすりおろしてざるに上げ、自然に軽く水気を切る。合わせた(A)を混ぜる。
- ③豚肉は5cm長さに切り、おろししょうがを加えたたっぷりの下ゆで用八方だしでゆで、ざるに上げて水気を切る。フライパンにサラダ油1mlを熱し、豚肉をひと炒めして取り出す。
- ④ ③のフライパンをさっとふき、サラダ油1mlを熱し、三つ葉以外の①の野菜を炒め、塩、こしょうで調味する。器に盛り、③、②をのせ、みつばをあしらう。
- 【ポイント】八方だしを上手に利用しよう!
素材を下ゆでするときは、八方だし(13リットルのだし汁に砂糖30g、薄口しょうゆ1/4カップ、塩小さじ1)とだし汁(1.8リットルの湯に約30gの削り節)を、2:1の割合で合わせたものを使うと、素材のうまみを引き出せます。少しでも塩分を減らすためのポイントです。
国循の“おいしい減塩食”が家でも作れる!
食事も循環器病の予防や治療の一環と考え、栄養バランスを兼ね備えつつ食塩を控えたおいしい病院食を提供してきた国循。「退院しても食べたい!」の声に応えて、2012年、入院患者に提供している減塩料理をまとめたレシピ本を発売。今ではシリーズ累計38万部を超える人気となりました。
おいしいから毎日の家族の食事として楽しめるのはもちろん、子どものうちから素材の味を理解し、味覚を育てるためにも、ぴったりと評判です。