東京でみつけた灘の酒、櫻正宗
【藤田酒店】東京・神田

関西・オンナの美酒佳肴

東京でみつけた灘の酒、櫻正宗

【藤田酒店】東京・神田 

 東京に転勤になった飲み仲間との再会は何年ぶりかしら。大阪にいるとき、天王寺で立ち飲みのハシゴを案内してくれたNさんだから、東京でもぜひにと立ち飲みをリクエストした。待ち合わせたのは東京駅から近い大手町のビル。神田方面に歩き始めてすぐに景色が変わる。昭和の雰囲気を残した八百屋や乾物屋が並んでいる。この界隈なら絶対に面白い店…そんな予感がした。

 

櫻正宗の看板に迎えられて
櫻正宗の看板に迎えられて

 

 冬の17時すぎはもう暗い。灯りのともった看板には、「櫻正宗」の大きな文字。地元、灘の酒を東京でみつけるのはうれしいもの。さっそく中に入ると、純然たる酒屋はさすがに日本酒の品ぞろえが魅力的だ。カウンターで酒とつまみを注文するキャッシュオンデリバリー制なので、缶ビールや缶チューハイは自分で冷蔵庫から出す。おつまみの乾きものも自分で棚から取ってカウンターで精算する。
 「今日は月曜だからホワイトベルグ生樽は190円です」「えっ!」普段でもそう高くないはずなのに、なんとお得な日に来たのだろう。当然このビールからいく……。

 

プラスチックカップにコインを入れておく
プラスチックカップにコインを入れておく

 

 Nさんと久しぶりの話題は互いの近況報告から。そして大阪時代によく一緒に飲んでいた飲み仲間のこと、同じ業界の噂話、小さなテーブルを挟んで、話しはつきない。2杯目は、缶のハイボール。普段あまり目にしない駄菓子をおつまみにするのもおいしくて。テーブルの上にあるプラスチックのプリンカップには、すぐに注文できるように小銭を入れておくのが常連さんのシステムらしい。気付くと1時間ほどがすぎ、店内はほぼいっぱいに。

 

酒屋さんだけに酒の種類が豊富
酒屋さんだけに酒の種類が豊富

 

 ふと手にとった櫻正宗の団扇の裏に気になる文章があった。日本酒の銘柄には正宗と付いているものが多い。その理由として、臨済宗の経典、臨済正宗の「せいしゅう」が清酒に通じることからその名をつけ、「せいしゅ」と読ませたとある。それが1840年に生まれた櫻正宗だ。これにならう酒蔵が増え、いつの頃からか「まさむね」と読まれるようになったとか。
 櫻正宗はまた、協会一号酵母発祥の蔵でもある。1904年、政府が全国の酒蔵から集めた酵母の中から最も優良だとされ、全国に広まった。地元の酒蔵のことを遠く離れた東京で知ったのがうれしい。

 この流れだと当然櫻正宗を飲む、といきたかったのだけど、別の場所での食事会があったため、アペリティフは軽めの2杯だけにしておいた。櫻正宗は地元ではもちろんよく飲んでいるし……。次に来たときは日本酒をいろいろ飲もう!そう心に決めて後ろ髪をひかれる思いで駅に向かった。

 


◆ MENU(税込)
ホワイトベルグ生樽290円
日本酒(90ml)350円~
櫻正宗390円~

◆ Data
藤田酒店
電話:03-3256-0831
住所:東京都千代田区内神田2-10-2
営業:17:00~21:00
休み:土・日曜、祝日


◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 おいしい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/