MET所蔵品となる名品が続々~東洋陶磁美術館の特別展「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション」

 大阪市立東洋陶磁美術館で特別展「竹工芸名品展:ニューヨークのアビー・コレクション―メトロポリタン美術館所蔵」が開催中だ(記事中の写真はいずれも12月20日撮影)。

二代目田辺竹雲斎(1910-2000)「牡丹花籃 富貴」(昭和15-25年頃)の隣に東洋陶磁美術館所蔵の「五彩 牡丹文盤(「大明萬暦年製」銘)が展示され、籃に大輪のボタンを活けたイメージを喚起する

 この展覧会は、2017~18年にメトロポリタン美術館(MET)で開かれて評判を呼んだ“Japanese Bamboo Art:The Abby Collection”(「日本の竹工芸:アビー・コレクション」展)を再構成したもので、日本では大分県立美術館(2019年5月18日~6月30日)、東京国立近代美術館工芸館(9月13日~12月8日)と巡回し、2020年4月12日(日)まで展示する大阪が最後の開催地となる。

 日本の巡回展では、各美術館の館蔵品と組み合わせた展示が工夫され、オリジナリティーあふれる構成の妙が味わえるのが特徴だ。

 東洋陶磁美術館では、アビー・コレクションから近現代の竹の作品75件を、同館の陶磁器コレクションとともに展示。さらに美術館のエントランスの吹き抜け空間には、大阪が誇る現代作家、四代田辺竹雲斎さん(1973-)が、6人の弟子たちと約2週間かけて特別制作した巨大な竹のインスタレーション「GATE」が出迎えてくれる趣向だ。

1ー2階の吹き抜け空間には、四代田辺竹雲斎さん(中央)が作った虎竹の竹ひご約1万本を組み合わせた竹のインスタレーション「GATE」が広がる。高さ・幅は約7m。編み上げられた竹ひごの連なりは過去と未来をつなぐダイナミックなうねりとなって見る者に迫る

第1会場に飾られているアビー・コレクションの一例。左が本間秀昭(1959-)作の「流紋」(平成26年)、右が本間一秋(1930-2017)作の「いぶき」(昭和43年)

 

 

 入り口に、君子の人柄を竹の清新さになぞらえて称える中国・北宋の蘇軾(1037-1101)の短詩を掲げる第1会場では、アビー・コレクションを紹介している。

 ダイアン&アーサー・アビー夫妻が20年以上前から集め、ニューヨークの自宅に20世紀後半の西洋絵画や彫刻などとともに飾って鑑賞してきたコレクションの特徴は、大きく二つ。一つは、竹工芸を家業としてきた歴代の系譜に沿って、スタイルの展開がたどれるコレクションになっていること。もう一つは、竹による表現の可能性に挑戦する現代作家の作品を多く含んでいることだ。このコレクションは2020年にMETに寄贈されることが決まっているという。

第2会場では大阪の煎茶文化ゆかりの花籃が飾られている。色合い、かたちの妙……じっと見ていると時間を忘れそうだ
第3会場には飯塚小玕斎(1919-2004)作「白錆花籃 雲龍」(平成2年)など、大型でモダンな作品が並ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 第2会場ではスイス商人ハンス・シュペリ(1859-1925)の言葉を挙げて、幕末~明治初期に煎茶文化の流行の最先端を走っていた大阪の煎茶の席で用いられた籃(かご)の多彩な美を見ていく。そして第3会場では、竹工芸の収集家だったロイド・コッツェン(1929-2017)の言葉を挙げて、竹という一つの素材から多種多様なかたちを生み出す創造性に迫る。

竹で作った作品がアートとして評価された最初の作品として重要な阪口宗雲斎(1899-1967)作の「果物籃 水月」(昭和4年)。豊中生まれの宗雲斎は15歳のころ初代田辺竹雲斎(1877-1937)に師事し、24歳で独立。この作品で1929年の第10回帝展に竹工で初めて入選した

 やわらかくしなり、思いのほか強く、そして軽やかな竹。その無限の可能性を感じられる展覧会は、気分があらたまる年の初めに足を運ぶのにふさわしい展覧会といえるだろう。

【会期】2020年4月12日(日)まで※月曜休館(ただし1月13日、2月24日は開館し、1月14日と2月25日火曜が休館)。

【開館時間】午前9時30分~午後5時※入館は閉館の30分前まで 【入館料】一般1,200円、高大生700円

【問い合わせ】大阪市立東洋陶磁美術館 TEL.06・6223・0055

 

公式ホームページ http://www.moco.or.jp/exhibition/current/?e=545

 




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