今秋の解体が予定されている神戸市役所2号館の外壁に巨大なアートを描き、建物の花道を飾ろうと、民間団体「Kobe Mural Art Project(神戸ミューラルアートプロジェクト)」が取り組みを進めている。アーティストへの対価をはじめ、制作に必要な資金をクラウドファンディングサイトで3月31日(火)まで募集している。(3回連載の1回目)
ミューラルアートとは、壁面の所有者の同意のもと、アーティストがペンキなどを用いて描く作品で、許可のないグラフィティ(落書き)とは異なる。アーティストが感性と技術を発揮し巨大な壁面いっぱいに描かれたアートは近年、写真スポットとしても人気を呼んでおり、とりわけハワイのカカアコ地区は、かつて倉庫街だった街の一角をミューラルアートの一大集積地に変え、観光地の一つとなっているほどだ。街の活性化にもつながる要素として、広く注目を集めている。
ミューラルアートは神戸市内でも徐々に見られるようになった。その「仕掛け人」でもあるのが「Kobe Mural Art Project」の代表・秋田大介さんと、数々のミューラルアートフェスティバルの開催実績を持つ「POW!WOW!JAPAN」のディレクター・岡本絵美里さん。二人は2016年に出会い、岡本さんの活動を秋田さんがサポートする形で、六甲アイランドのカナディアンアカデミーを中心に、島内の様々な施設でミューラルアートを制作。翌17年には港都神戸芸術祭の関連プロジェクトとして、メリケンパークやセンタープラザなどの壁面に作品を増やしてきた。
今回は「神戸市役所2号館ありがとうプロジェクト」の名で、昨年12月に発足。縦約10㍍、横約30㍍の南北2面の壁にミューラルアートを制作しようとクラウドファンディングサイトで呼びかけたところ、これまでに400万円以上が集まった。3月31日の募集終了までに、最終目標金額の500万円を集めたいと意気込む。
■「アートで生計を立てるアーティストは、日本では少ない」
ミューラルアートの持つ力について、秋田さんは「街の風景が一瞬で変わり、アート鑑賞のハードルを下げてくれるのが魅力」と話す。今回のプロジェクトについては「震災で被災したものの、庁舎として60年以上にわたり頑張ってくれた2号館に感謝するとともに、市のシンボル的な建物に絵を書けば、多くの人がアートに触れられる機会になると考えました」とそのねらいを話す。
神戸市役所の職員でもある秋田さんにはさらにもう一つ、プロジェクトに込めた思いがある。それは、神戸を「市民によってアーティストが正しく評価され、アーティストが育つ街」にしたいとの思いだ。国内外でミューラルアーティストとの交流がある岡本さんによると、「日本では、アートで生計を立てているアーティストはまだまだ少ない」という。今回、クラウドファンディングを導入したのも、市民がアートを気軽に楽しめ、その対価としてお金を出し合い、アーティストを応援する文化を神戸に根付かせたいと願うからだ。
(第2回に続く)https://www.asahi-family.com/news/22782
【Kobe Mural Art Project クラウドファンディングサイトはこちら】
https://camp-fire.jp/projects/view/222104