今秋の解体が予定されている神戸市役所2号館の外壁に巨大なアートを描き、建物の花道を飾ろうと、民間団体「Kobe Mural Art Project(神戸ミューラルアートプロジェクト)」が取り組みを進めている。アーティストへの対価をはじめ、制作に必要な資金をクラウドファンディングサイトで3月31日(火)まで募集している。(3回連載の2回目)
公務員でありながら、「行政だけじゃ街は変われない」が秋田大介さんのモットーだ。きっかけは、研修先のアメリカで見た街づくりの最新事例だった。「特にシアトルやポートランド。市民と行政が手を取り、実にうまく街づくりに生かしている。『市民の巻き込み方』のすごさに驚きました」
帰国後の2013年に担当した三宮駅前の新たな街づくりプロジェクトでは、意識的に、市民の声を広く聴き取り入れようと試みた。自分が想像していた以上に、神戸の街づくりに対して「何かがしたい」と考えている人が多いことに驚いた。「だったら、仲間になって一緒にやってもらうのがいいと思いました。これまでの経験から、行政だけが頑張っても街は変われない、と感じていました」
住んでいる一人ひとりの、一つひとつの小さな行動が集まることで初めて、“150万人からなる巨像”でもある神戸市が動くことを、三宮でのプロジェクトを通じて体感した。街のことを思う市民を巻き込み、外部のチャンネルを豊富に築いた今では、何か課題が浮かび上がった時「この人とこの人に仲間になってもらい、行政をこうからませれば解決に近づく」とイメージできる。現在、神戸市役所では企画調整局つなぐ課に勤務。行政の縦割りや慣習にとらわれず市民本位の政策に「つなぐ」こと。社会課題の真の解決に必要な人や組織を「つなぐ」ことが役割だ。
■「一緒に面白いことを盛り上げる、“仲間”になってくれませんか」
神戸市役所にミューラルアートを制作するためのクラウドファンディングは、開始1週間で、1次目標の250万円を達成した。協力してくれた多くの人が、アートにとりわけ関心のない人であることにも手ごたえを感じている。今は、南北両面の壁にアートを完成させるため、500万円をネクストゴールに設定している。「お金を出してくださいというよりは、一緒に面白いことを盛り上げる“仲間”になってくれませんか、と呼びかけたいです。面白そうだからやろうよ、という雰囲気はやがて、街自体の“寛容”にもつながると思います」。描きたい人と、描ける場所。そしてそれを応援する人たちが組み合わさると、神戸のアートシーンはうまく循環していくとイメージしている。そして、自分はそれを「つなぐ」役割だと認識している。
(第3回に続く)https://www.asahi-family.com/news/22790
【Kobe Mural Art Project クラウドファンディングサイトはこちら】
https://camp-fire.jp/projects/view/222104