新型コロナウイルス感染症が拡大する中、3月以降、防止策として様々な催しが延期になっている。4月7日には大阪と兵庫を含む7都府県に緊急事態宣言も出され、当たり前と思ってきた日常がますます遠のいている。そんな中で、豊中を本拠に活動する日本センチュリー交響楽団が3月28日土曜日に無観客で行ったクラシックの演奏会を、関西圏で初めて㈱ドワンゴの「ニコニコ生配信」を使ってネット配信し、延べ12,000人余りが視聴したと話題になっている。
この演奏会は、同楽団が指定管理者として運営・管理を行っている豊中市立文化芸術センターで年4回開いている企画で「センチュリー豊中名曲シリーズVol.13」として開催予定されていたもの。
ネット生配信を決めた経緯について同楽団は「私たちもほぼ全部の公演が中止もしくは延期となり、活動に大きな影響を受けています。我々オーケストラが社会に果たす役割を再考し、演奏を1人でも多くの人に届けることが大切だという結論にたどりつきました。音楽が持つ力を信じ、多くの人の心が明るくなることを願い、その思いを形にするべくネット生配信という形で演奏会を開くことになりました」と説明している。
当日は15時からのコンサートの前に「プレパフォーマンス&トーク」も舞台上から配信。コンサート本編では、メンデルスゾーンの序曲「フィンガルの洞窟」、2本のクラリネットのための協奏的小品第1番と第2番、ベートーヴェンの交響曲第7番を披露した。
当初予定していた指揮・クラリネットソロのヴァレンティン・ウリューピンが来日できなくなったため、指揮は同楽団首席指揮者の飯森範親、クラリネットソロは元NHK 交響楽団首席奏者の磯部周平が担当(もう一人のクラリネットソロは予定どおり同楽団首席奏者・持丸秀一郎)。無観客ではあったが楽団メンバーたちも演奏できる喜び、音楽を届ける喜びにあふれ、非常に高い集中力と熱量でいつも以上にハイレベルな演奏を聴かせ、視聴データでは98.9%が高い満足を得たという。
ニコニコ動画では、リアルタイムに画面上にコメントが流れる。楽団メンバーたちは「好意的なコメントに勇気づけられた」「ネットで大勢の方がつながり音楽を楽しんでいることを実感できた」そうだ。
楽団広報は「関西圏だけでなく東京をはじめ全国、海外からの視聴も多かった。通常のコンサートでは少ない30~40歳代が6割近くを占めたことも大きな収穫でした。生の演奏を聴いていただくのが一番であることに変わりはなく、一日も早く本来の活動が再開できることを願いますが、技術革新が著しい時代、ネット配信も今後重要なツールの一つになり得ると手応えを感じました」と話している。