■江戸後期から現代まで 藍のファッションの伝統と現在
「藍のファッション」展は江戸後期の浴衣から2020年の洋服まで、日本の藍の衣装と藍染の魅力をご紹介する展覧会です。
第1章「伝統的なゆかたの世界」では、浴衣を中心に、模様を施すための様々な染色技法(絞り染め、長板中形<ながいたちゅうがた>、籠染め<かごそめ>、注染など)をご紹介します。
第2章「ゆかたと藍染めの現代」では、現代のゆかたを現代のドレスコードに合わせたコーディネートで展示するほか、有松絞りや藍染めなどを用いながらも、伝統的な「着物」の形にとらわれずに、新しい感性で作品を発表している作家やファッションブランドをご紹介します。
第3章「『ジャパン・ブルー』を求めて」は「本藍」をテーマにしたスペースです。蓼藍(たであい)の葉を原料とする「すくも」を用いて、灰汁などで発酵建てする伝統的な工程を経て生み出された染織作品や、ファッション、デザインプロダクトを展示しています。
幅広い作家やブランドが手がけた50点以上の昨品により、藍のファッションの伝統と現在(いま)をご紹介します。
■作家自身がたどり着いた「青」 夜空に輝く蛍のように
ご紹介する福本潮子さんは、京都在住で、着物からタピスリー、インスタレーションなどの美術作品まで、多岐にわたる藍の作品で国際的に活躍されています。京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)西洋画科を卒業後、日本の伝統文化を学ぶため龍村美術織物で二代目龍村平蔵に師事。植物染等を学んだのをきっかけに、作品を藍染めで制作するようになりました。
本展第2章「ゆかたと藍染めの現代」に展示されている《蛍》は、中国・新疆ウイグル自治区トルファン地方の上質な綿で作られた着物です。作家自身がたどり着いた「藍の青」に深く染まった、滑らかでツヤのあるトルファン綿に、畳んで縫う絞り方で施された白い丸が、まるで夜空に輝く蛍の光のように見えます。
《蛍》における藍と白の関係とその美しさを、次の福本さんの言葉からより深く感じとることができます。
「私は藍の発色や濃度、色足(染めの際にできるグラデーション)にこだわって作品を制作してきた。そのこだわりは染め残した白にあるとも言える。作品の主題は白をどのように残すかに集約されることもあり、作品によっては藍色は空間意識のようなもので、そこに実在するものとして白が漂ったりする。藍が美しくきわだてばきわだつほど白の存在感が増す。染め残しのこの白は布の素材の生地の色。生地から伝わってくるものはそれぞれに様々だ」(『福本潮子作品集 藍の青』赤々舎、2015年)
■6月2日(火)から再開 本物にじっくり接して内面の会話深めて
当館は5月31日(日)まで臨時休館し、6月2日(火)から再開を予定しています。なるべく平日の人の少ない時間帯に鑑賞することをお勧めします。
(芦屋市立美術博物館 企画課 学芸員 尹 志慧<ユン ジヘ>)
《芦屋市立美術博物館》
阪神芦屋駅から徒歩約15分。坂倉建築研究所の設計で1991年3月に開館しました。芦屋ゆかりの美術家を中心に、近代・現代の作品や芦屋の自然や歴史に関する文化財・考古資料の収集・保存・調査・研究を行ってきました。1954年に吉原治良を中心に芦屋で結成され、近年国内外でますます評価が高まっている前衛美術グループ「具体美術協会(1954-1972)」の作品を中心に、日本の近現代作品を積極的に紹介しています。
※5月31日(日)まで臨時休館。
※新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、関連イベントの開催は当面の間、予定しておりません。
※今後変更の可能性があります。開館については下記ホームページをご確認ください。
芦屋市伊勢町12-25
https://ashiya-museum.jp/
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「おうちでミュージアム」は、地域が誇る美術館・博物館の名品を自宅にいながら楽しんでもらおうと企画しました。各館の学芸員や担当者が“お気に入り”の作品や、近々、お目にかかれる作品を一つだけ選んでご紹介します。世の中が落ち着いたら、ぜひ足を運んで、実際に五感で魅力を確かめてください。