久しぶりの神戸の夜は、人物名を冠したカクテルで

関西・オンナの美酒佳肴

久しぶりの神戸の夜は、人物名を冠したカクテルで

【アルコホール】神戸・三宮 

外でお酒が飲めない日々は長かった。店の前を通る度に、閉まったシャッターの前で、「行けるようになったら、まず行こう」と決めていたのは、以前、三宮での飲み会のあと、電車に乗る前に立ち寄っていた駅近のオーセンティックバー「アルコホール」だ。

この店の開業は1986年。友人に連れられて初めて来たのは、2000年を過ぎた頃、それから15年以上経って、ふらっと入ったときに、マスターとの会話で、過去にも来たことがあったのを思い出した。梨本康雄マスターは数々の大会で賞をとったバーテンダーで、聞き上手な上に話上手という人。

久しぶりに座るカウンター席。店を閉めていた間、何をしていたんですか、とたずねると「自宅のリメイクと新しいカクテルを考えていた」という返事。阪神・淡路大震災で休業せざるをえなかった時から30年近くたったコロナ禍の休業。「あの頃は時間が財産だと気づいていなかった、今は残された時間があの頃とは違う。アクティブに動けるのはあとどのくらいだろうと考えたら、いろんなことをやろうと思った」と、逆転の発想で充実した休業期間を過ごしていたそうだ。


カクテル渋沢栄一

新作は人物カクテル。その人の生き様をカクテルで表現したものだ。「渋沢栄一」カクテルをオーダーすると、パステルカラーのそれが目の前にすっと置かれた。渋沢の熱い情熱を表現するためにラテン系のラム酒をベースに、チャービル(フランスパセリ)、グレープフルーツ、レモンを加えて、甘くほろ苦い味に。氷を一切使わず、凍らせたグレープフルーツをミキサーでつぶして、シャリ感とともに不思議なとろみを出している。


カクテル湊かなえ

もう一つの新作の名は作家の「湊かなえ」。湊さんの実家がみかん農家なので、温州みかんを使い、こちらも氷を使わず、温州みかんを凍らせてミキサーにかけ、カンパリとレモンに、マンダリンオレンジを加えた。マンダリンオレンジは温州みかんの自然な甘みを活かす苦味なのだ。以前来られていた湊さんが、次に来店されたときに飲んでほしいという思いを込めた。

3杯目は定番の「パーフェクトジントニック」。最初に広がる清涼感、そしてあとから香るジンの香り…。ほろ酔いがこんなに心地良いものだとは。久しぶりの感覚を楽しみながら、今夜はこのくらいで帰ろう、といつになく早い時間に失礼した。まだまだ気は抜けないから……。


◆ Data
Alco-Hall(アルコホール)
電話:078-331-1846
住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通1-2-13 シマダビルB1
営業時間:16:00~0:00
休み:日曜

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
※お出かけの際は府県が発表する最新情報とお店の営業状況をご確認ください。

 


◆ Writing / 松田きこ(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/