国内屈指のコレクション数で新たな美の拠点をめざす「大阪中之島美術館」が2月2日、大阪市北区に開館した。構想開始から約30年を経ての待望のオープンで、同日始まった開館記念展には大勢の観客が詰めかけている。
巨大な玉手箱を思わせる漆黒の外観。地上5階建ての館内に入ると、大きな吹き抜け空間にエスカレターや階段が縦横に入り組み、かつて映画などで見た未来都市を訪れたような気がする。南北を貫くパッサージュ(小径)の先にある広い窓には、北側を流れる堂島川や周囲に林立するビル群が映え、見慣れた大阪の街並みもどこか洗練された雰囲気だ。
美術館は大阪市が1983年、市制100周年の記念事業として構想を打ち出したのが始まり。実業家からの寄贈や自らの収集でコレクションを増やしてきたが、バブル崩壊後の財政難や市長の方針転換などで肝心の美術館建設は紆余曲折を繰り返し、民間が運営するPFI法を全国の美術・博物館で初めて導入する形で、ようやく開館にこぎつけた。
2日スタートした開館記念展「Hello!Super Collection 超コレクション展 99のものがたり」では、長い時間をかけて収集した約6千点以上にのぼる近現代のコレクションの中から代表的な作品約400点を一堂に見られる。
関西最大級の面積を誇る4,5階の展示室を3章に分けて構成。第1章では、山本發次郎コレクションなど美術館形成の源となった作品たちを紹介。佐伯祐三「郵便配達夫」、マリー・ローランサン「プリンセス達」、池田遙邨「雪の大阪」など、そうそうたる作品群に圧倒される。
第2章は「Hello! Super Stars」と題し、ルネ・マグリット「レディ・メイドの花束」、ジャン=ミシェル・バスキア「無題」など、代表的な近代、現代作品が豪華に並ぶ。注目はアメディオ・モディリアーニ「紙をほどいた横たわる裸婦」。バブル期に高額購入が大きな話題を呼んだ作品で、いま安住の地を得て、少しほっとした表情のようにも見えた。
第3章「Hello! Super Visions」は、デザイン作品を中心に多彩にそろう。ロートレック「ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ」などの絵画のほか、コロマン・モーザー「アームチェア」、倉俣史朗「ミス・ブランチ」などの家具や造形作品、ポスターを多数展示。紋切り型のイメージで語られがちな大阪が、実は広がりのある美術の先進地であることが伝わってくる。
中之島に展示施設を置いた前衛美術集団「具体美術協会」にちなみ、展示室の壁の一部を黒く塗り上げたり、町工場の技と心意気を伝える巨大ロボット風の金属作品を設置するなど、作品以外の趣向も随所に。1階には外から直接出入りできるレストランやデザイン家具店が近日オープンする予定で、中之島の賑わいづくりにも一役買う。
1月28日に記者会見した菅谷富夫館長は「開館まで長い時間をかけた分、作品1点ずつに物語や背景があります。記念展にはとにかくできるだけたくさん出品しました。タイトルの99の残り1は観客の皆さん。これまでのストーリーをたくさんの人に感じていただければ、とても幸せです」と話した。
開館記念展は3月21日(月・祝)まで。一般1,500円、大高生1,100円。日時指定事前予約優先制。10~17時。月曜休館(3月21日は開館)。https://nakka-art.jp/