7/15(金)から兵庫県立芸術文化センターで始まる佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2022「ラ・ボエーム」で、ヒロイン・ミミを演じるソプラノ歌手、砂川涼子さん。「国内でミミを歌うなら、あの人!」と真っ先に名前が挙がる当たり役で、初めてKOBELCO大ホールの舞台に立ちます。6/2に阪急中ホールで行われた「ワンコイン・プレ・レクチャー」で美声を披露した機会に、インタビューしました。
【ミミ役・砂川涼子さんインタビュー】
「歌声を聴かせてほしい」と2019年秋に初めてお会いした佐渡さんは、元気いっぱいで楽しい、そこにいらっしゃるだけで周りを明るくする太陽のような方だと思いました。2年間待った念願の舞台でご一緒させていただくのが楽しみで仕方ありません。
初めての兵庫、初めての佐渡オペラに大好きな役で
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラは、これまでも本当に素晴らしい公演を続けてこられて、出演される方々も豪華ですし、私もいつか歌えたらいいなと思ってきました。
今回、私の大好きな「ラ・ボエーム」で、しかもミミ役で初めての兵庫に出させていただける。海外からの歌手の皆さんもいらして、豪華で本格的なオペラに出演できる。幸せの極みです。
「ミミは何度も歌っているでしょう?」と言われますが、「ラ・ボエーム」の全幕公演自体がそれほど多くはないので、今回4公演できることも夢のようです。日本でのオペラ公演は、多くて2、3回。舞台は一瞬一瞬が大切ですが、回数を重ねることで良い意味で変化があるように思うので、上演ごとにどんなふうになっていくのかも楽しみにしていることの一つです。
1カ月間みっちり稽古をして臨む舞台は久しぶりです。また、感染症対策が求められる中、合唱のないコンパクトな舞台にも出演しましたが、今回は約100人もの合唱がある。本当にようやく戻ってきたなと感じます。
アカデミー賞®美術賞を3回受賞したデザイナーが作る舞台
アカデミー賞®美術賞を3回受賞されたダンテ・フェレッティさんの舞台装置と衣装、新しい演出も楽しみにしています。目指すものは一つで、ゆるぎない、こういうミミをやりたいという想いは自分の中にありますが、演出家が新しい切り口を開いてくれたら、自分が思っているミミとちょっと違う風になるかもしれませんね。
ミミの魅力は言葉に表れている魂の美しさ
ミミの魅力は魂の美しさだと思います。彼女が語っている言葉も本当に美しい。
言霊(ことだま)と言う言葉があるように、言葉には力があると思うんです。彼女が語っている言葉、全幕を通して彼女の気持ちの移り変わり、最後に皆に囲まれて亡くなっていくシーン。どのシーンの言葉も美しいんです。
死が近づいていても、私はいつも幸せな気持ちで歌います。皆に囲まれて、「暖かいマフを誰が持ってきてくれたの? 高かったでしょう? ありがとう。私、ちょっと眠ります」と、ミミは幸せに亡くなっていったと思うのです。
涙するのはロドルフォが最後に「ミミ!」と呼ぶから。ミミが亡くなったと皆が気づいているのに、ロドルフォだけが気づいていない。いつも「最後まで泣かない」と思っていても、あの声を聞くと涙が出てしまうんです。今回、ロドルフォ役の笛田博昭さんが、どんな風に演じてくださるのか、とても楽しみです。
生い立ちや職業、ミミを取り巻くいろいろな事情がありますが、私は純粋に彼女の美しい魂を感じてもらえるように歌うのが使命かなと思っています。ベストなコンディションで歌うのはもちろんなのですが、魂の美しさが伝わるように歌いたい。
美しいオペラの世界で描く愛と青春
最後は悲しい終わり方ですが、オペラはリアルであるよりも、どこかファンタジーであった方がいいかなと思っています。物語自体は10代後半から20代前半の若い人たちの話なので、夢見がちでフワフワ、キャピキャピしています。自分にもそういう時代があったな、懐かしいなと思ってもらえたらと思います。
先ほどのプレ・レクチャーで中村敬一先生(オペラ演出家)が「冬のパリは曇りの日が大半で、月の光が美しく差すシーンはありえないけれども、プッチーニがここに月の光がいると考えてオペラを作っている」とおっしゃっていました。
月の光が差す中で、ロドルフォとミミの愛の二重唱が始まる。本当に美しい、恋人同士として一番幸せなシーンです。そこから徐々に悲劇性が増していく。幸せだから涙する。音楽の力もあるでしょうが、二人が語っている言葉にも美しさがあるのです。
2時間50分の間、お客様たちも普段と違う、日常ではない時間を過ごしていただければ。そのためにも美しくありたいと思いながら、ミミのかわいらしさを、歌とお芝居と言葉で表現したいと思います。
【公演概要】
- 公演日時:7月15日(金)・16日(土)・17日(日)・18日(月・祝)・20日(水)・21日(木)・23日(土)・24日(日)各日14:00開演 上演時間2時間50分(休憩2回)
- 料金:A席12,000円(全席指定・消費税込み)ほか
佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ歌劇「ラ・ボエーム」特設サイトはコチラ http://gcenter-hyogo.jp/boheme/