2006年のスタートから公演回数は200回超え、コロナ禍でも途切れなく上演を続けてきた山本能楽堂の「初心者のための上方伝統芸能ナイト」が今年度も始動する。商人の町・大阪で生まれ、人々を楽しませてきた伝統芸能の数々から毎回、4つ以上のジャンルを取り上げて、そのハイライトを15~20分程度にまとめて上演する親しみやすい公演だ。
7月16日(土)から来年1月まで、月1回土曜に全7公演を繰り広げることを発表する記者会見が先月、山本能楽堂で開かれた。
山本能楽堂の山本章弘さんが、昨年の記者会見で「デパ地下の試食コーナーみたいなもん」と桂春蝶さん(落語)が話したことを紹介して「うまいこと言うなと思いました。どれも初めてでも、さわりだけでも、多ジャンルを一緒に見ていただいて、面白さを発見していただける。演目をやる前に話上手な落語家の皆さんが、少し解説してくださるのも好評です。ここを入り口に、それぞれの伝統芸能に興味を持っていただければいいなと思います」。
それを受けて春野恵子さんが「別の会場で演じた時、お客様から『山本能楽堂で見ましたよ!』と声を掛けていただくことが本当に多いんです。年に数回はありますね」と言うと一同、大いにうなずいて、たくさんの演者たちが同じ経験をしていそうだ。
「初心者のための上方伝統芸能ナイト」の公演日と出演者は下記の通り。会場は国登録有形文化財の山本能楽堂(地下鉄谷町4丁目)。「ナイト」の名だが、開演時間は12月31日を除き、各日とも15時開演(14時30分開場)で約2時間。今年度は感染症対策で中止していた観客の体験コーナーを復活したい意向だ。
7月16日(土)■落語:桂かい枝、浪曲:春野恵子、天王寺舞楽:天王寺楽所雅亮会、能:山本章弘
春野恵子さんは「山本能楽堂は音の響きが素晴らしいので、演者も心地よい。ぜひマイクを通さない生の音、生の三味線をお楽しみください」。
春野さんの相三味線、曲師の一風亭初月さんは「山本能楽堂さんの勧めで春野さんが英語浪曲をやるようになったので、いろいろな所へ海外公演に行きました。浪曲界に入ってこんなことになるとは! 台本を作るところからで、ン十年ぶりに英語の勉強をしたりしました」。
8月20日(土)■落語:桂吉坊、文楽:人形浄瑠璃文楽座、上方舞:山村友五郎、能:山本章弘
文楽三味線の竹澤宗助さんは「能楽堂でやる文楽は制約が多く、太夫、三味線、人形1体での上演となります。長い話を短く編集するので大変ですが、皆様に見ていただければ私たちも勉強になります」。
人形遣いの吉田玉助さんは「普段は男の人形を遣っていますが、ここでは女の人形も遣うので、珍しいものを見ていただけるかなと思います」。
9月17日(土)■OSAKA女性活躍推進月間スペシャル
落語:桂二葉、講談:旭堂小南陵、浪曲:春野恵子、女道楽:内海英華
内海英華さんは「女道楽は大正時代からの芸なので、伝統芸能の中ではゴマメですが、令和の時代をどう反映していくかが私の役目。飛ぶ鳥を落とす勢いの二葉ちゃんと、自分の小屋を持って活躍している小南陵さんと、恵子さんと私。女性たちがこんなに楽しく生き生きとやっているということをご覧いただきたい」とコメント。
10月15日(土)■落語:桂春蝶、浪曲:真山隼人、筑前琵琶:奥村旭翠、能:山本章弘
初登場の真山隼人さんは「15,6歳で入門し、地下鉄の駅でチラシやポスターを見ていた公演に、自分が出られるなんて! 大きな舞台にふさわしい浪曲ができるよう当日まで精進します」。沢村さくらさんは「曲師は現在、大阪に4人しかいないので、どなたさんでも弾かせていただいていますが、真山さんとは相三味線ですので、息のピタッと合ったところをお聞かせしたい」とコメント。
奥村旭翠さんは「プロが少ない琵琶の世界で、重要無形文化財保持者の私の役割は、琵琶を世の中に広めること。琵琶は芸術ではなく、大衆芸能です。平家物語だけが琵琶ではありません。いろいろな曲を聞いていただければ」。
11月5日(土)■落語:桂吉坊、講談:旭堂南海、浪曲:菊地まどか、上方舞:山村友五郎
旭堂南海さんは「講談も基本的に時間が長い芸なので短い時間で何ができるかを試しています。関西には演芸場(釈場)がないので、貴重な機会をいただいています」とコメント。
12月31日(土)■大晦日スペシャル
落語:桂ちょうば、お座敷遊び:南地連中、女道楽:内海英華、文楽:人形浄瑠璃文楽座、能:山本章弘
21時30分開演(21時開場)で約3時間、年末恒例の特別公演を特別料金で。
2023年1月14日(土)■落語:桂春蝶、上方舞:山村友五郎、講談:旭堂南海、能:山本章弘
桂春蝶さんは「20代のころ、伝統芸能のユニットがあり、全体の底上げにつながったと感じていました。ここには初回から出演させていただいていますが、楽屋で新しい横のつながりが生まれ、新しいユニットができ、発信基地にもなっています」とコメント。
各公演の料金は正面席5,500円、ワキ・2階席4,000円(12月31日はそれぞれ1,500円増し)。予約・問い合わせは山本能楽堂、TEL06・6943・9454へ。ホームページからも予約できる。
山本能楽堂のホームページはコチラ http://www.noh-theater.com
イープラスでは、ライブ配信チケット(公演日から1週間アーカイブ配信あり)も販売中。