世界的指揮者ケント・ナガノと能楽師山本章弘がコラボ~「月に憑かれたピエロ」と新作能「月乃卯」9/12上演

日系アメリカ人の世界的指揮者ケント・ナガノと観世流能楽師・山本章弘が共演する画期的な舞台が9月12日(月)18時30分から、山本能楽堂(大阪メトロ谷町四丁目)で開かれる。タイトルは「The spirit of the Moon~月に憑かれたピエロと新作能『月乃卯(つきのうさぎ)』」。山本が手掛ける5作目の新作能となる。

ケント・ナガノは1951年生まれの日系3世のアメリカ人指揮者。小澤征爾の一番弟子といわれる。現在はドイツのハンブルク州立歌劇場音楽監督を務めている。以前は 14年間にわたりカナダのモントリオール交響楽団音楽監督も務めていた。ⓒFelix Broede

ナガノは、20世紀初頭に登場した表現主義音楽の旗手アルノルト・シェーンベルク(1874-1951)の「月に憑かれたピエロ」を定番のレパートリーとして指揮してきた。

2019年に音楽監督を務めるハンブルク・フィルと日本ツアーを行った際、熊本県山鹿市にある八千代座で熊本地震復興支援チャリティーコンサートを行った。その折、祖父母の出身地に立ち寄り、祖父がよく遊んだという鹿央町の千田聖母(ちだしょうも)八幡宮を訪れた。そこで月の光に照らされた小さな野外舞台を見て「ここでこの曲を演奏したい」とインスピレーションが沸いたという。

同時に思い出したのが幼少時に祖母から聞いた「月とうさぎ」の物語だった。自らを犠牲にしたウサギを神が月に昇らせたとする昔話だ。この物語を、子どものころに初めて見て“内面的な美しさ”を感じた能で上演するアイデアが浮かび、知人に先進的な試みを積極的に行っている能楽師を知らないかと尋ねていった。

山本能楽堂の代表理事を務める山本は、現役の能楽師としてルーマニアのシビウ国際演劇祭への参加や英語字幕の導入、新作能の発表など長年、多彩で挑戦的な活動を積極的に繰り広げてきた。それを聞いたナガノが山本にコンタクトを取った。

「声を掛けていただき、光栄でした」と話す山本は、マエストロと1年半前からリモートで打ち合わせを重ねてきた。

後シテの月読之神(ツキヨミノカミ)の装束を公開した山本章弘さん=7月7日、山本能楽堂で

7月7日に行われた山本能楽堂での記者会見に、滞在先の南フランスからリモートで参加したナガノは「能という偉大な伝統のための先見的な大使であり、このような野心的なプロジェクトを受け入れてくださった山本先生に感謝したい。先生との長い会話は、深いインスピレーションを与えてくれた。

ある名作を普段とはまったく違う文脈で見ることで、異なる視点から多くのことが見えてくることがある。しかし、そのような試みは軽薄で無礼なこととみなされる恐れもある。私たちは、能とクラシック音楽の両方に対して、深い真剣さと責任感、そして献身の念を持って取り組んでいる。

ともにリアルタイムで行われる生きた芸術形式であり、静寂や間など“見えない要素”を大切にするクラシック音楽と能の世界が交錯することで、次世代に伝えるための新しい文脈が生まれるのではないか」と話した。

山本は「ギリシャ神話のオルフェウスを題材にした新作能を2019年9月にブルガリアで初演した時、ヨーロッパの人たちに高く評価されました。今回取り上げる自らの命を捧げたウサギは、コロナ禍やウクライナの戦火によって惜しまれつつ亡くなった方々に重なるように思います。いろいろな言葉を探りながら台本を練っていますが、世界の人たちにも理解していただける作品にしたい」と話した。

メゾソプラノの藤村実穂子は現在、オーストリア第二のオペラハウス、グラーツ歌劇場の専属歌手として、幅広いメゾのレパートリーを歌っている

公演は新作能「月乃卯」の中入りに、ハンブルクフィルハーモニー管弦楽団メンバーとメゾソプラノ歌手・藤村実穂子による「月に憑かれたピエロ」からいくつかを選んだ演奏が入るかたちに落ち着きそうだという。世界初演は前日、熊本の八千代座で。

大阪公演はアーツサポート関西が支援し、クラウドファンディング「HEART&ART」を実施している。期間は9月12日(月)までで目標金額は500万円。

クラウドファンディングはコチラ https://congrant.com/project/ask/4700

【チケット発売情報】

発売開始:8月8日(月)10:00

購入方法:イープラス https://eplus.jp/

チケット料金(全席指定):S席20,000円、A席15,000円、学生席5,000円 ※オンライン視聴も可能になる予定。

山本能楽堂のホームページはコチラ http://noh-theater.com/

 




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カテゴリ: ライフ&アート