大阪は古都!「能で巡る大阪」(全5公演)で魅力を再発見して! 9/4(日)から山本能楽堂でスタート

古代、大陸からの文化を受け入れてきた「難波津」の港があった大阪は、平城京や平安京以前に都が置かれ、長い歴史を持つ古都だ。しかし、高層ビルが立ち並ぶ近年のまちの姿からは、その魅力はあまり感じられない。

記者会見に参集した関係者の皆さん。(前列左から)梅若猶義、山本章弘、上野朝義、生一知哉。(後列左から)竹村伍郎(NPO法人まち・すまいづくり理事長)、中村文隆(生國魂神社、上新田天神社)=8月22日、山本能楽堂で

一方、約650年前に観阿弥・世阿弥が大成した能のルーツは関西にあり、大阪を舞台にした能が多数つくられ、今も人気演目として上演されている。

そこで、人々に親しまれている大阪の神社ゆかりの能を、神社の関係者や歴史学者とのトークとともに届けて、その演目を観劇し、大阪の魅力を再発見してもらおうという企画「能で巡る大阪」(全5公演)が9月4日(日)から山本能楽堂(大阪メトロ谷町四丁目)でスタートする。能楽界における大阪の職分家の師家5家(上野家、梅若家、大西家、生一家、山本家)の当主が力を合わせて上演する。8月22日、公益社団法人 能楽協会とともにこのこの企画公演を主催する山本能楽堂で記者会見が開かれた。(以下、公演写真は山本能楽堂提供)

 

■9月4日(日) 14時開演 能「玉井」

後シテの海神

対談 小出英嗣(住吉大社)×竹村 伍郎(NPO法人まち・すまいづくり理事長)

能の出演 山本章弘、山本麗晃、赤井きよ子、前田和子、茂山千三郎ほか

【あらすじ】兄・火闌降尊(ほのすそりのみこと)に借りた釣り針で、海辺で釣りをしていた彦火々出見尊(ひこほほでみのみこと)は、釣り針を魚に取られてしまう。兄から釣り針を返せと責められて海中の都に探しに行った彦火々出見尊は、豊玉姫と玉依姫に出会い、宮中に案内されると時を忘れてしまい……。

【ゆかりの神社:住吉大社】全国2300社を超える住吉神社の総本社、住吉大社は伊弉諾尊(いざなぎのみこと)が禊祓を行われた際に海中より出現された底筒男命(そこつつのおのみこと) ・中筒男命(なかつつのおのみこと)・表筒男命(うわつつのおのみこと)の三神と神宮皇后をまつる航海の守護神。王朝時代には和歌・文学の神として、あるいは現実に姿を現される神としての信仰もあり、禊祓・産業・貿易・外交の祖神と仰がれている。大阪市住吉区住吉2丁目9−89

 

■10月30日(日)14時開演 能「芦刈」

対談 平岡勉(田蓑神社)×山本章弘

能の出演 梅若猶義、立花香寿子、喜多雅人、茂山千三郎ほか

【あらすじ】貧しさのあまりに夫と別れた日下左衛門の妻は、その後貴人の乳母となり良い暮らしができるようになった。そこで都を離れ、夫の行方を尋ねて従者を伴い難波の浦に下っていき、芦売りの男に出会う。男は、難波の御津の浜や春の美しい景色の様子を舞いながら語り、人々に芦を買うように勧めていたが……。

【梅若猶義のコメント】能には珍しく「この世ならぬ者」が出てこない演目で、直面(ひためん)で演じます。直面の難しさは自分の顔を能面にしなくてはならないこと。表情を動かせないので、最初から最後まで微動だにせずに演じる難しさがあります。

【ゆかりの神社:田蓑神社】貞観11(869)年創建。住吉三神と神功皇后をまつる。天正年間、徳川家康がこの地に立ち寄った際、神崎川の渡船を勤めた縁で、後に幕府から隅田川下流の干潟を賜り、故郷の名をとり佃島と定め、田蓑神社の御分神霊(東京都中央区佃の住吉神社)を奉戴した。寛永8(1631)年から田蓑神社内に家康公がまつられている。大阪市西淀川区佃1-18-14

 

■12月10日(土)14時開演 能「梅」

月の出とともに現れる梅の精(後シテ)

対談 小谷真功(高津神社)×山本章弘

能の出演 上野朝義、広谷和夫、山下守之ほか

【あらすじ】早春2月、京都五条に住む藤原何某はまだ見ぬ難波津を一目見に行こうと都から下っていく。難波津に着いて、早春の海辺の気色を眺めながら、大友家持が桜の季節の難波津を詠んだ歌を思い出す。歌を吟じて、今はまだ梅の盛りだと独り言を言うと、里女が現れて家持の歌は、もともとは桜ではなく梅を詠んだものだったと言い……。

【上野朝義のコメント】実は「梅」は初演になります。古代への思いを感じながら演じたいと思います。

【ゆかりの神社:高津宮(高津神社)】浪速の地を皇都(高津宮)と定め、大阪隆昌の基を築いた仁徳天皇を王神と仰ぐ神社。貞観8(866)年、清和天皇の勅令によって難波高津宮の遺跡が探され、それがあったと定められた地に仁徳天皇を祀る社が建立されたのが始まりとされる。700年後の天正11(1583)年、豊臣秀吉の大坂城築城の際にご神体を現在地に移すが、大阪大空襲で全焼。現在の社殿は、戦後に再建された。大阪市中央区高津1-1-29

 

■2023年1月9日(月・祝)14時開演 能「鉄輪」

女の生霊(後シテ)

対談 高島幸次(歴史学者)×山本章弘

能の出演 大西礼久、福王知幸、喜多雅人、鈴木実ほか

【あらすじ】自分を捨てて新しい妻を迎えた夫の不実を恨み、貴船神社へ毎日願かけする都の女。今日もお参りに行くと「赤い着物を着て顔に朱を塗り、鉄輪(五徳)を頭に載せて、その三つの脚にロウソクを付けて火を灯せば、生きながらの鬼になって、恨みを果たせるだろう」とのお告げを伝えられる。女は人違いではと言うものの、みる間に顔色が変わって走り去っていく。一方、夢見が悪い夫は陰陽師の安倍晴明を訪れて祈祷を頼むが……。

【ゆかりの神社:安倍晴明神社】社伝によると、晴明没後2年の寛弘4(1007)年の創設。境内には、江戸の文政年間に建設された晴明誕生の地を示す碑や、産湯の跡などがあり隆盛 を極めたが、幕末に衰退へ。大正10(1921)年、50m南にある阿倍王子神社の末社として復興、大正14(1925)年に現在の社殿が建てられた。大阪市阿倍野区阿倍野元町5-16

■2023年1月29日(日) 14時開演 能「雷電」

雷神(後シテ)

対談 柳野 等(大阪天満宮)×山本章弘

能の出演 生一和哉、原 大、善竹隆平ほか

【あらすじ】比叡山延暦寺の座主、法性坊が天下泰平を祈願する仁王会を執行していると、夜も更けたころ、寺の門をたたく音が聞こえる。不審に思いながら覗いてみると、法性坊が親代わりとなって養育した菅原道真の霊が立っていた。生前の恩に感謝を述べ、打ち解けて語り合ううちに道真は「私は雷となって、敵対していた殿上人たちを蹴殺そうと思う」と明かし……。

【生一和哉のコメント】世阿弥がめざした夢幻ものを進化させた作品だと思います。前半は静かで、後半は道真が暴れ回り、師弟で闘うシーンが展開します。若い時によく演じたスペクタクルなシーンを、この年齢で演じることになるとは思いがけないことでしたが、精いっぱい務めます。

【ゆかりの神社:大阪天満宮】白雉元(650)年、孝徳天皇が難波長柄豊崎宮を建立した際、都の西北を守る神として大将軍社をこの地にまつった。延喜元(901)年、菅原道真は太宰府へ向かう途中、この大将軍社で旅の無事を祈願した。その後、道真は太宰府で死去。50年あまり後の天暦3(949)年、社の前に一夜にして七本の松が生え、夜毎にその梢を光らせた。これを聞いた村上天皇は、勅命によって社を建立し、道真公の霊を厚くまつった。大阪市北区天神橋2-1-8

【問い合わせ】

各公演の入場料は4,000円。予約・問い合わせは山本能楽堂、TEL06・6943・9454(平日10~17時)へ。ホームページからも予約できる。

山本能楽堂のホームページはコチラ http://www.noh-theater.com

 

ここに紹介した「能で巡る大阪」は公益社団法人 能楽協会がおくる今年度の「日本全国 能楽キャラバン」の一環。「日本全国 能楽キャラバン」は、作年度に引き続き「コロナ禍で委縮した文化芸術活動の再興」を支援するために文化庁が募集した、「統括団体によるアートキャラバン事業」の一つで、今年度は23都道府県42会場63公演が行われる。

公益社団法人 能楽協会のホームページはコチラ https://www.nohgaku.or.jp/




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