もっと、いい街に
思いは同じ

「私たちがつくる紙面で、地域に元気と活気を」。アサヒ・ファミリー・ニュース社は、いつもこの思いを胸に、50年の歴史を重ねてきました。長年、「朝日ファミリーStyle」をお届けしている阪神・北摂エリアでも、分野は違っても、私たちと思いを同じくする、たくさんの人に出会えました。

 

エコが根づくまちに from Ikeda

循環させたい 環境も笑顔も

NPO法人いけだエコスタッフ理事長
庄田佳保里さん

●1978年生まれ。再生可能エネルギー、地球温暖化防止活動、3R、環境学習支援の4事業を軸に活動を行うNPO法人いけだエコスタッフの理事長を2010年から務める。

「食・ごみ・エネルギーの循環を池田で完結させたいんです」と目を輝かせた。池田市で環境保全やSDGsの大切さを伝えるNPO法人の理事長を務める。

運営する「エコミュージアム(中央公民館1階)」では、市内の農家が育てた野菜や、寄付された食器・衣類などのリユース品を販売。持ち込んだ人からは「家が片付いた」、購入者からは「いいものが安く買えた」と喜びの循環を生んでいることもやりがいの一つだ。

売り上げの一部で設置した太陽光発電機は市に寄贈し、阪急池田駅前をはじめ5カ所で稼働中。植木の産地として知られる細河地区では、張り巡らされた用水路を活用した小水力発電にもチャレンジしている。

小学校で行われる環境学習では教員の要望をヒアリングし、授業づくりのコーディネーターの役割を果たす。「猪名川の生態系を知ってもらうため河川レンジャーと連携し、体育館にちょっとした『ふれあい水族館』を作ったこともあります」と笑う。

寄付された和服の生地でリースづくり。小学校への出前授業から

地域で築いた人脈は財産だ。「池田市で育ちましたが、活動を通じていろんな人の存在や思いを知ることで、本物の『地域愛』が生まれた気がします」

 

地域を明るく from Toyono

〝おかん元気〟が地域を元気に

オカンバレエ団団長
佐竹敦子さん

●豊能町在住。2019年に「オカンバレエ団」を設立、8人のメンバーが特技を生かし、地域と「おかん」を元気にする活動をしている。12歳、10歳、8歳、5歳の3女1男の母。

「おかんが光れば、みな、光る!」

ユニークなコピーが目を引く「オカンバレエ団」を率いる。おなじみの衣装で「瀕死(ひんし)の白鳥」を踊り、会場の人も「バレエ ラジオ体操」に挑戦。あの体操がたちまちバレエになり、会場は笑いに包まれた。

大学卒業後、保育士になったが、好きなバレエを諦めきれず、25歳でバレエ団に入団。退団とほぼ同時に結婚。上の2人の子育て中は好きな書道もやめた。「今から思えばどん底でした。いつも怒りっぽくて、子どもに当たり散らして……」

夫に「子育て終わったらどうするの?」と言われてはっとした。レッスンを再開し生活にバレエが戻ってくると、毎日が楽しくてイライラしなくなった。お母さんがイキイキしていることが大切なんだと気づいた。同志を募るとベリーダンス、ウクレレ、歌、好きなことをやりたいお母さんたちが集まり、ワークショップを開いたり、踊りや歌を披露する形ができてきた。

「バレエ団」ながら、メンバーそれぞれが得意芸を披露

「好きなことで楽しく生きているおかんが増えたらいいな。家庭が、そして地域が明るくなる気がします」

 

文化は人がつなぐ from Amagasaki

演劇で広げるコミュニケーション

兵庫県立ピッコロ劇団 団員
平井久美子さん

●大阪府生まれ。高校卒業後、ピッコロ演劇学校で学び1994年入団。2月17~19日県立芸術文化センターで上演するブレヒト劇「三文オペラ」でジェニーを演じる。「生きるって苦しい。無様でも生きる姿をお見せしたい」

「シアターに学校があり、人材を育成していることが誇り」。そう話す平井さんは全国初の県立劇団・兵庫県立ピッコロ劇団の設立当初からのメンバーだ。

入団から9カ月で阪神・淡路大震災。「何かしなければ」と焦る団員に、一緒に稽古していた文学座の演出家やベテラン俳優が言った。「君たちはプロの俳優だろ? 演劇を通じて貢献しなければ」。生き延びるのに必死の大人たちの陰で、子どもたちは? 家も遊び場も失った子が体を動かし、大きな声を出して発散できるように「大きなカブ」「ももたろう」の寸劇を携え2カ月で52の避難所を回った。今も続く「ファミリー劇場」の原点だ。

ピッコロ演劇学校はピッコロシアターが学びのフィールド

「初代劇団代表の秋浜悟史の考えで、団員も教壇に。教えると学びも大きい」。コロナ禍では朗読劇や紙芝居を配信。「新たに楽しめる方法が増えた一方で、生の舞台を肌で感じる良さも忘れたくない」。障害のある人にも演劇を届けるバリアフリー上演にも力を入れている。「コロナ明けにハッピーが待っていると最高ですね!」

 

食で人を笑顔に from Ashiya

父の味と香りをいつまでも

「ビゴの店」代表取締役
ビゴ・ジャンポール・タロウさん

●東京都生まれ。イギリスとフランスに大学留学後、父フィリップさんのもとで修業を積んだ。2022年度兵庫県技能顕功賞を受賞。兵庫県内などで10店舗を経営する。「原料高で頭が痛いですが、味と質を守り、お求めやすいパンを提供し続けます」

「父は食べることがとにかく好きでした。食卓に座ると皆が笑顔になれるように、ずっと変わらず、毎日食べられるおいしいパンを届けていきたい」

国道2号沿いに立つ「ビゴの店」芦屋本店。ビゴ・ジャンポール・タロウさんは、父のフィリップ・ビゴさんが1972年に開いた店を日々忙しく切り盛りする。フィリップさんは22歳で来日し、フランスパンを日本に広めたことで知られる。2015年に芦屋市民文化賞、17年に外国人として初めて、厚生労働大臣による「現代の名工」に選ばれたが、18年に急逝。後を継いだタロウさんは「昼夜を問わず、必死に働いていた父を間近に見ていた。パリで下積みから始め、普通では考えられない人生を送ったと思う。教わったことを忠実に守っていくのが僕の役目」と力を込める。

洋館風の外装が目を引く「ビゴの店」芦屋本店

皮は薄くパリッと、身はもっちりと軟らかい「ビゴ」の味と香りは、天然酵母とイースト、塩、水だけで小麦粉の力を引き出して生まれる。「味が少しでも違うと感じたら、厳しいお言葉をいただけるのが芦屋のお客様の本当の優しさ。これからは若い世代に伝えていければうれしい」

 

子どもたちのために from Kobe

応援している大人は、ここにいるよ

神戸みらい学習室 住吉校 スタッフ
渡邊 優子さん

●1969年生まれ。兵庫県職員。 2018年からボランティアで、神戸みらい学習室住吉校(旧本山校)の運営に携わる。現在は同校の責任者として運営を取り仕切る。

「神戸みらい学習室」は、「すべての子どもに、等しく教育の機会を。」との思いから、2017年、現役の神戸市職員の有志が集まって立ち上げた無料の学習塾だ。開講日は日曜日で、経済的な事情などで塾に通えない中学生が通う。

渡邊さんは、普段は兵庫県職員として働きながら、学園都市校に続いて18年に開校した住吉校で運営を担う。講師・スタッフも全員がボランティア。活動に賛同した社会人や地元の大学生たち約30人が登録している。「塾に通うことが前提なのか、公立中学校では宿題もあまり出ず、塾に通う子と通わない子で学力が二極化している。そんな格差を少しでもなくし、子どもたちが将来に希望を持てる社会にしたい」と話す。

住吉校の学習の様子。見回りながら、生徒に声をかけたり、相談にのったりすることも

人と関わるのが好きで、PTAや自治会にも積極的に参加してきた。この活動も、まずは手伝いから始まり、前任者から運営を引き継ぐことに。講師と生徒のマッチングから経費の管理まであらゆる業務をこなしつつ、講師と連携しながら、どうすれば効果的な学習支援ができるか試行錯誤で取り組む。「子どもたちに、応援している大人がいるよって伝えたいです」

 

震災を経て from Kobe

思いを束ねて、街に新たな活気

村上工務店 代表取締役社長
村上 豪英(たけひで)さん

●1972年生まれ。神戸モトマチ大学代表(学びを通じて人の輪を生みだすプロジェクト)、有限会社リバーワークス代表取締役社長(まち・不動産の企画)なども務める。

神戸市兵庫区の元・湊山小学校が、昨年7月にコミュニティ型複合施設「NATURESTUDIO」に生まれ変わった。その立役者だ。

神戸で三代続く工務店の経営者。大学4年時の阪神・淡路大震災で変わり果てた神戸の姿を目の当たりにし、豊かな街への思いはひとしおだ。「工務店として学校のリノベーションだけをするのではなく、東日本大震災を契機にスタートした『神戸モトマチ大学』などの経験を生かし、地域交流の場にしたいと思いました」。理科室は水族館に、校庭にはニジマスが釣れる池、給食室はクラフトビールの醸造所、体育館はカレーやりんご菓子が食べられるフードホールに。常にイベントを開催し続け、老若男女が集う場所になった。

NATURE STUDIOに集う子どもたち。湊山小学校は村上さんの母校でもある

「あの場所は『ビジネスとして難しいんじゃないか』という声もありましたが、それなら逆にダメをひっくり返して面白いといわれるものを作れば、人は集まってくると思いました。成功のカギは人です。同じ興味を持ち、お互いの得意なことを知る仲間が集まって考えれば実現に向かいます。思いを束ねて、これからも街に新たな活気をもたらしたいですね」




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カテゴリ: 50周年