椎名桔平 WOWOW「連続ドラマW 事件」で主演
「真実に向き合う弁護士をリアルに」 8/13(日)スタート

戦後日本文学の重鎮・大岡昇平による不朽の裁判小説「事件」。日本を代表する傑作ミステリーが、WOWOWにて連続ドラマ化され、8月13日(日)午後10時から放送・配信される。監督はWOWOW「連続ドラマW」でも重厚な人間ドラマを手掛けてきた水田成英。ドラマや映画で圧倒的な存在感を放つ椎名桔平さんが、過去に自身が下した判決をトラウマとして抱える元裁判長の弁護士・菊地大三郎役を主演する。自白により殺人罪に問われている被告と被害女性だけが知る事件の裏側から、痛みを伴いながら真相をたぐり寄せていく法廷サスペンスドラマ。真実に向きあった者たちの葛藤と再生を描く注目作の見どころや魅力について、椎名さんにお話を聞きました。

WOWOW「連続ドラマW 事件」での主演について語った椎名桔平=7月、大阪市内で

―トラウマを抱えながら、殺人の罪に問われている被告人たちの闇と真相をたぐり寄せていく元エリート裁判官の弁護士という役どころです。どのような心構えで臨まれたのですか。

『法律家として、菊地ほど潔癖な人はいない』という台詞があります。潔癖であるがゆえに、5年前の出来事をずっと抱えている。そこを乗り越え、3人の証人尋問や検事との対決を通して、彼自身が変化していく。50歳を過ぎた一人の弁護士の成長物語としての側面もあるので、そこに至るまでの過程を丁寧に演じたいと思い、撮影に臨んでいました。

―数ある法廷ドラマの中でも「事件」について、どのような印象を持ち、撮影に備えられたのでしょうか。

裁判や法廷の話は小難しかったり、逆にエンターテインメントに走りすぎたりするイメージがありました。原作は大岡昇平さんが綿密な取材をもとに書き上げた名作ですから、非常にリアル。昭和に描かれた作品の舞台を令和に置き換え、10数年前に始まった裁判員制度を盛り込むなど、何度も練り直して出来上がった台本はすばらしく、感銘を受けています。これだけ映画化、ドラマ化を重ねてきた揺るぎない裁判小説なので、令和の時代にどんな弁護士を自分が演じられるのかをリサーチし、自分なりの菊地像を作ろうと考えていました。

5年前のトラウマを乗り越え「真実」に向き合っていく

―リアリティーを出すために、どんなリサーチをされたのでしょうか。

大阪に住む同郷の友人が弁護士をしているので、メールでいろいろと相談に乗ってもらいました。弁護士は裁判でどんな発言の仕方をするものなのかとか、法廷の中でどんな立ち振舞いをするものなのかとかね。アメリカのドラマって、法廷の中を弁護士が歩き回って話すシーンとかよく見るじゃないですか。あれって本当にあるの?って彼に聞いたら、日本ではほとんどしないって。画が固まってしまうので、もちろん範囲内で少々動きはしましたけど、リアルさが一番大切だと思って演じました。現職の方のアドバイスは本当に参考になりましたよ。また、裁判所のセットが本物以上かって思えるぐらいすばらしかった。スタッフがそれだけ準備に力を注いだのだと役者陣も感じるものがあり、気持ちが入りました。

―これまでにさまざまな役で活躍されてきましたが、弁護士という役はどのように捉えていますか。

弁護士は役としては難しいほうだと思います。弁護士は人を裁くわけですからね。医師だと「病気を治す」という一つのベクトルに向かえばいいところがあるけど、弁護士は「人を救う」面もあれば、「人を罰する」という面もあって、ベクトルが二つある。さらに近年は裁判員制度も加わり、一般から選ばれた人と一緒に事件の量刑を判断していくわけですから、本当に難しい仕事だと感じます。今回は冤罪という大きな落とし穴も隠されていて、人生を預かるような緊張感を特に感じました。

抜群の洞察力と機知の富む弁舌で真相に迫る

―俳優としての醍醐味や今作に出演されて椎名さんが得られものがあれば教えてください。

いろんな人の人生の、ある瞬間を生きられる醍醐味はありますね。さまざまに準備をして、台詞もしっかりと覚えてカメラの前に立ったら、弁護士以外の何者でもない気持ちになる。そういう所は他と違った職業と言えますね。演じる度に得られるものや、学びが多い。今作で言えば、裁判はこういう段取りでやっていくんだと知りました。裁判の件数もすごく多くて、迅速化するために、公判前整理手続など検察と事前に打ち合わせもするんだとか、表から見えにくいことも、本当に勉強させてもらっていると思います。

―菊地弁護士がトラウマを乗り越えて変化していくのも見どころです。同じ世代として感じたことはありますか。

人生において、思い出したくない過去とか、生きていたらいっぱいありますよね。重い体験をしてもすぐに乗り越えられる人もいれば、常に思い出して心のどこかに引っかかっている人もいる。菊地はかつて裁判長として、「冤罪だったかもしれない」という、普通の人は体験しないような最終的な判断を下したわけですから、特殊な負の体験として残っているのはよくわかります。ドラマの後半では、人生への「答え」みたいな発言を菊地弁護士が話す場面がありますので、ぜひ楽しみに見ていただきたいです。

永島敏行が裁判長役として椎名桔平演じる菊地弁護士を見守る

―ご共演の皆様とはどんな雰囲気で撮影が進んだのでしょうか。

1978年に公開された映画版で被告人の宏役を演じた永島敏行さんが、今作では裁判長役でご出演されています。永島さんとはこれまでも何度か共演させてもらっていますが、居住まいがすばらしい。法廷の奥で裁判長としてずっと座っていらして、長い撮影の合間でもその役を崩すことがない。裁判長は菊地を優しく見守っている役どころなのですが、実際に包まれているなという安心を感じました。また親友役の髙嶋政宏さんは、いつも傍聴席にいてくれるのですが、ちらっと見ると目線で合図してくれて、まさに「あうん」の呼吸。非常に支えてもらった気がします。

―WOWOW「連続ドラマW」の魅力や、視聴者へのメッセージをお聞かせください。

WOWOWの「連続ドラマW」は、より深みのあるテーマを、より深みのある描写でじっくりと視聴者の皆さんにお届けできるのが魅力だと思っています。「間違わない人間なんていない。間違えれば、やり直せばいい」。その言葉にようやくたどり着いた菊地の心情を一つの拠りどころと考えて演じました。骨太な人間賛歌としても、ぜひ皆さまに見ていただけるとうれしく思います。

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「連続ドラマW 事件」WOWOWで8月13日(日)スタート!
毎週日曜午後10:00放送・配信(第1話無料放送)

小さなスナックを経営する坂井葉津子(北香那)の殺人を巡り、法廷で次々と意外な事実が明らかになっていく

<ストーリー>
ある資材置き場で刺殺体が発見される。被害者は地元で細々とスナックを経営する23歳の坂井葉津子(北香那)。ほどなく被害者の幼なじみで19歳の上田宏(望月歩)が殺人および死体遺棄の容疑で逮捕された。宏の弁護は、ある裁判を機に過去にとらわれ、“真実”に背を向けた元裁判官の弁護士・菊地大三郎(椎名桔平)に託された。宏の自白もあり、すぐに判決が下る単純な裁判だと思われたが、検察での取り調べから一転、裁判で宏は殺意を否認する。宏のことを調べるうちに、再び「真実」と対峙する菊地。やがて法廷では意外な事実が次々と露見し、裁く者を惑わせる。果たして宏は、本当に「人殺し」なのか――。

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