飲んで食べて、シメは手打ちのカレーうどん
【料理とお酒 い草】神戸市中央区
蕎麦屋で軽めの肴をつまんで酒を飲み、シメに蕎麦を味わう、粋を気取って飲むには丁度いいシチュエーションだ。ところが最近気に入っている店は、美味しい肴を食べたあとのシメが手打ちうどん。料理もうどんも、これがなんとも美味しい居酒屋なのだ。
JR三ノ宮駅から北へ3分ほどの場所に、その居酒屋「い草」はある。2017年4月に三宮に移転してきたばかり。それまでは元町で「い草製麺所」という名で、昼はうどん屋、夜は酒が飲めるうどん屋として営業していた。移転に伴って、酒と料理が中心になったが、手打ちうどんもちゃんと定番メニューとして残っている。
昆布と鰹で丁寧にひいただしがすべての基本。そのうどんだしをベースにしたおでんは、ごろんと大きい大根、淡路玉ねぎなど、しっかり味がしみて、おまけに、だしまで飲み干してしまう美味しさだ。ビールをぐっと飲んだら、燻玉ポテトサラダにいく。粒マスタードがきいたポテサラの上に、燻製ゆで玉子。うどんだしで煮た玉子を桜のチップでいぶした香ばしさはなんとも言えず、日本酒がほしくなる。地酒はかなり珍しいものも含めて常に15種類はあって、ワインは国産が4種類。なんと楽しい居酒屋だろう。
主人の北川貴志さんは、フランス料理出身。蕎麦屋で腕を磨いたのちに、うどん屋として独立した。働いていた蕎麦屋の主人は「なんでうどん屋なんだ?」と複雑な思いだったろうが、北川さんは、「手打ちうどんが面白くて」独学で技術を身につけた。料理人としての腕があったとはいえ、満足のいくうどんができるまで苦労が続いた。蕎麦打ちは国産の粉を使っていたから、と自然にうどんも国産の小麦粉を選んだ。国産小麦粉は、グルテンが少ないため、そう簡単には理想の麺にはならず、水の入れ方やこね方を工夫して、伸びがある手打ちうどんが仕上がった。
料理とお酒を味わったあと、いつも私はカレーうどんを食べる。フレンチ出身の北川さんのルーは、スパイスに鶏ガラスープを加えて作るスタンダードな欧風カレー。トマトで酸味を加えて、うどんだしでのばす。辛くはあるけれど、あと味すっきりだ。カレーに欠かせない黄色いスパイス、ターメリックの和名はウコン。ウコンは二日酔いにいいと聞くし、気休めかもしれないが、毎回「飲んだあとには必要よね」と自分への言い訳をしながら食べるのだ。ちなみに「い草」のうどんは半玉。シメの分だけおなかの隙間を残しておこう。
◆ MENU
生ビール518円
日本酒グラス388円~
燻玉ポテトサラダ410円
おでん・大根216円、淡路玉ねぎ216円
カレーうどん540円
◆ Data
電話:078-221-2386
住所:兵庫県神戸市中央区琴ノ緒町5-7-7 西山ビル 1F
営業:17:00~24:00(23:00 LO)
休み:日曜、祝日、月1回不定休
◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 美味しい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/