冬場はヒートショックに、いっそうの注意を

毎年、寒い時期になると注意を喚起されるのが「ヒートショック」です。主に入浴中に起こりやすいイメージがありますが、日常を通じてどんなことに気を付ければ発症を防げるのでしょうか。神戸循環器クリニック診療部長の茂真由美先生(日本循環器学会専門医/日本内科学会総合内科専門医・認定内科医)に聞きました。

茂 真由美 先生

■急激な温度変化による血管へのダメージ

ヒートショックとは、気温変化の差によって血圧が上下し、心臓や血管の病気の引き金になることをいいます。たとえば暖かい場所から急に寒い場所に移動すると血管は縮み、血圧は上昇します。

こうした血圧の急激かつ大きな変動は血管に負担をかけることになり、脳梗塞、脳内出血、心筋梗塞、大動脈解離ほか、命にかかわる重篤な状態に陥る恐れがあります。2018年の統計では、ヒートショックによる死亡者数は年間約5400人とされ、交通事故の年間死亡者数(約3500人)を上回っています。

 

■気温の変化をなるべくフラットに

冬場の日常生活で、ヒートショックの原因となる気温変化が起こりやすいのは、やはり入浴時です。暖かな居室から寒い脱衣所で服を脱ぐことで血管が縮み、血圧は上昇します。その後お湯につかると血管は広がり、血圧は急に下がります。こうした「血圧の乱高下」が生じやすい入浴時は、とくにヒートショックに注意する必要があります。

あらかじめ暖房機で脱衣所を暖めておいたり、入浴前に浴槽のふたを開けて浴室を暖めておくなど、気温の変化をなるべく少ない環境にしておくこと。さらにシャワーや湯船の温度は熱すぎない38℃~40℃程度に。長湯はせず、浴槽から急に立ち上がらない、また入浴前には水分をしっかり補給し、家族に一声かけておくと安心です。気温差が生じやすいという側面から、冬場のトイレや、朝に起床してすぐ散歩に出かけるといった行動にも注意すべきです。

■高血圧、脂質異常症などはより注意が必要

気温の変化による血圧の上下は、健康な人を含めたすべての人に起こりますが、その中でもヒートショックによる重篤な心臓や血管の病気を発症するリスクが高いのは、高齢者であることに加え、①高血圧②脂質異常症③不整脈(心房細動など)④糖尿病⑤肥満や睡眠時無呼吸症候群の人 とされています。

①高血圧②脂質異常症④糖尿病は、それ自体が動脈硬化のリスク因子であり、日頃から血管への負担にはさらされているといえます。その状態で、さらに血圧の上下が激しい「ヒートショック」が起こると、より注意が必要になるのです。また③心房細動は、高血圧、肥満、脂質異常症、糖尿病を抱えている人に多いとされる相関関係もあります。肥満の人に多いとされる⑤睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時に呼吸が止まることにより、無自覚のうちに心臓に負担をかけている状態になります。

■自分の体のリスクを自覚し、向き合うこと

ヒートショックを防ぐためには、先ほど述べた(入浴時などの)日常生活での環境づくりに加え、自分が抱えるこうした体のリスクに、日頃からいかに向き合い対処しているかが大きな分かれ道になるでしょう。

とりわけ高血圧は、検診などで指摘され自覚しているにもかかわらず、実際に医療機関で治療をして血圧をコントロールしている人は、そのうちの1/4程度といわれています。脂質異常症や糖尿病に関しても、検診結果に応じて医師に相談するなど早めの対策をとるようにしたいものです。検診など定期的な健康チェックの他にも、毎日血圧や体重を測定するなどして、ふだんから体の状態を把握しておくよう心がけたいですね。

 

神戸循環器クリニック

「多くの方の心臓と血管を守る」「3大疾病の早期発見」をコンセプトに、幅広い人間ドックのコースを用意。被ばくのないMRI検査を中心とした予防医学に注力している。

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