2021-22シーズン下野竜也「レニングラード」で閉幕、四方恭子コンサートマスター退任~兵庫芸術文化センター管弦楽団 第134回定期演奏会

【PACファンレポート56兵庫芸術文化センター管弦楽団 第134回定期演奏会】兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)の2021-22シーズンの最後を飾る第134回定期演奏会の指揮は、PACとは何度も共演を重ねる下野竜也が登場。プログラムのインタビューで「3年でメンバーが変わるのに、だんだんオーケストラとして熟していくのが興味深い」とあって、「その通り!」と共感した。

6月11日土曜「演奏前に指揮者が話すことをお好きでない方もいらっしゃるのは承知していますが」と前置きして始めたプレトーク。5月定期で佐渡裕芸術監督が披露した「交響曲第5番」に続いて、この日オール・ショスタコーヴィチ・プログラムを演奏する思いを、とつとつと語った。「芸術家に対しても容赦ない批判を浴びせた圧政下のソ連に生きた大作曲家の内面は複雑で、誰もうかがい知ることはできない」としながらも、楽譜に対峙した指揮者としての実感を話した。

2022年6月のプログラムの表紙

ブルガリアからの来日がかなわなかったプラメナ・マンゴーヴァに代わり、ソリストに石井楓子を迎えての「ピアノ協奏曲 第2番」。石井は2019年第26回ブラームス国際コンクール第3位、国内だけでなくドイツ・スイスで活躍する新進ピアニスト。下野はプレトーク中に「将来が楽しみなピアニスト。これからよく名前を聞くようになると思うので、このホールで聴いたなぁと思い出になるはずですよ」と紹介した。

ウエスト部分を光るベルトでマーキングしたモスグリーンのロングドレスで颯爽と現れた石井は、ショスタコーヴィチが19歳の息子のために作曲した明るい印象の20分余りの曲を、とても楽しそうに弾いた。若い演奏家との共演は、PACメンバーもややリラックスして楽しそうに見える。ソリストのアンコール曲は、プログラムに合わせてショスタコーヴィチ「24のプレリュードOp.34」より第10番だった。

 

オーケストラの曲はショスタコーヴィチ「交響曲 第7番 レニングラード」。バンダ(金管の別動チーム)10人を上手のひな壇に、コントラバスを下手に置いての大編成は、なんと97人! ドイツ軍の空爆を受けたレニングラードで作曲された曲で、1942年3月に初演されるや、6月にはイギリスで、7月にはアメリカでも演奏され注目を集めたという。センセーショナルを巻き起こした背景には、ファシズムに対する闘争に勝利するという、当初の作曲の意図がかかわっていたことだろう。

PACとマエストロは、約90分に及ぶ重厚長大な曲を弾き切った後で、アンコールにプーランクの歌曲を下野竜也が編曲した「平和のためにお祈り下さい」を演奏した。

 

コンサートマスターは四方恭子(3日間の定期演奏会終了後、2005年のPAC創設以来コンサートマスターとして活動した四方さんが、今シーズンで退任されると発表された)。

ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴァイオリンの西尾恵子(神戸市室内管弦楽団主席、千葉交響楽団契約首席)がPACのOG、ヴィオラの柳瀬省太(読売日本交響楽団ソロ・ヴィオラ)、チェロの西谷牧人(元東京交響楽団首席)もPACのOB、コントラバスの吉田秀(NHK交響楽団首席)。スペシャル・プレイヤーはオーボエの古部賢一(新日本フィルハーモニー交響楽団特任首席)、バスーンの中野陽一朗(京都市交響楽団首席)、ホルンの五十畑勉(東京都交響楽団奏者)、トランペットの高橋敦(東京都交響楽団首席)、パーカッションの近藤高顯(元新日本フィルハーモニー交響楽団ティンパニ主席)。

PACのOB・OGはゲスト・トップ・プレイヤーの2人を含めて総勢16人。ヴァイオリン9人、チェロとコントラバスが各2人、ヴィオラ、ホルン、パーカッション各1人が参加した。(大田季子)

【お知らせ】兵庫芸術文化センター管弦楽団の公式ツイッターには、演奏会後のPACメンバーと下野さん、四方さん、ソリストの石井さんの写真もありますよ!

下記は兵庫芸術文化センター管弦楽団の公式ツイッターから

 




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