計画的な大規模修繕の完了を告げたお披露目の特別演奏会「佐渡裕 音楽の贈りもの~指揮者ってなあに?~」

【PACファンレポート⑩ 芸術文化センター大規模修繕お披露目 佐渡裕 音楽の贈りもの~指揮者ってなあに?~】

 

 2005年10月の開館から10年を経過した兵庫県立芸術文化センターは、今年1月から3月まで公演を休止して大規模修繕工事を実施。4月8日と9日に工事完了を報告する大規模修繕お披露目「佐渡裕 音楽の贈りもの~指揮者ってなあに?~」と題した特別な演奏会が開かれた。

 

 4月9日午前の部「指揮者の歴史」でKOBELCO大ホールへ。約1時間の演奏会のプログラムは、佐渡芸術監督の師匠であるレナード・バーンスタインが1950年代にアメリカで行った「ヤング・ピープルズ・コンサート」をベースに、佐渡さんが独自の演出を施したもの。全部で12あるプログラムの中から、厳選した2プログラムのうちの一つだ。

  演奏前のトークに登場した佐渡芸術監督は、親しい友人に話すような気さくな調子で、近況を話し始めた。

 イギリスでの演奏会の準備でウィーンに滞在中、急きょウィーン交響楽団を代演で指揮したこと(あのカラヤンが首席指揮者を務めていた楽団に予期せぬデビュー!)、人気テレビ番組の収録で昨年4月の地震後に初めて熊本を訪れたこと(例の鶴瓶師匠の番組で、放映は4月17日の月曜だとか)、今年も東北の被災地で海に向かって演奏をしたこと……。いつもながらの東奔西走の大活躍に、客席からはホウーッとため息が沸き起こった。

 そして、どこか不具合が生じて修繕するのではなく、「計画的に」大規模修繕を行った意義を話し、舞台の中空の巨大スクリーンが大規模修繕の模様をビデオに映し出した。

裏表紙(右)に「大規模修繕レポート」が載る当日プログラム

   

 

 

 再び舞台に戻った佐渡さんは「まるで自動車免許の更新の時のビデオ上映みたいで……」と笑いを誘い、ホール照明のLED化で舞台と客席の温度差が解消されたこと、舞台左右に新しく設置された反響板で、オーケストラの団員同士が互いの音をよく聴き合えるようになったことなどを紹介。

 そして、いよいよ演奏会が始まった。演奏するのはもちろん、“わが街のオーケストラ”兵庫芸術文化センター管弦楽団(PAC)だ。4月6日の「卒業感謝音楽祭」で間近に見た今シーズンで卒団するメンバーたちが、なぜかまぶしく見える。

 

 フランス・ルイ王朝の時代に指揮者が誕生してから、現在の指揮棒を振るスタイルになるまでを、上海太郎さんと室町瞳さんがセリフなしで笑わせた愉快な寸劇を交えて紹介。ロッシーニの歌劇「ウィリアム・テル」序曲より“スイス軍の行進”、ヴィヴァルディ「四季」より“夏”など、耳になじんだ名曲を演奏した。

 

 「より細かなニュアンスを伝えるために、指揮棒を置いて演奏する曲もあるのですよ」との言葉で始まった最後の曲は、マーラー「交響曲第5番」第4楽章アダージェットより。佐渡さんの指先の表情と静かな抒情に満ちた曲の相関を大いに楽しんだ。

大ホール入り口には関係者から贈られたお祝いの花も飾られていた

 

 アンコールは一転して、バーンスタイン「ウエスト・サイド・ストーリー」から“マンボ”。客席からの掛け声もにぎやかに、楽しい演奏会だった。

(大田季子)

 

【お知らせ】PACの2017-18シーズン定期演奏会(全9回)をマイ・シートで楽しめる定期会員券は4月16日(日)から一般発売されます。詳しくは兵庫芸術文化センター管弦楽団の下記ホームページで。http://hpac-orc.jp/season_ticket.php




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