もはや京都に定着した感がある「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭」。第6回目の今年のテーマは「UP」。通常非公開の町家や寺院、指定文化財等を含む市内15カ所で展覧会が開催されている。会期は5月13日(日)まで。すべての会場を巡り、独断と偏見で選んだ見逃せない3つの展覧会を紹介する。
●フランク・ホーヴァット写真展 「Un moment d’une femme」
presented by CHANEL NEXUS HALL
嶋臺(しまだい)ギャラリー 京都市中京区御池通東洞院西北角
http://www.shimadai-gallery.com/
10:00 – 18:00、入場無料
今年1月にシャネル・ネクサス・ホール(東京銀座)で開かれたフランク・ホーヴァットの日本初の本格的な展覧会が巡回。
ファッション写真界のレジェンドも今年90歳。90年代初めにデジタル写真を試したことでも知られるが、引き続き、iPad用アプリケーション「Horvatland」をネット上に公開したり(2011年)、自身の集大成ともいえる写真集『house with fifteen keys』の回顧展がヨーロッパを巡回するなど(2013年)、そのチャレンジは常に話題になっている。
1950年代よりファッション写真の表現に新風を吹き込み、同ジャンルの黄金期を担った写真家のひとりゆえ、彼の骨頂はモデルや人々の人生を瞬間に切り取るファッション・人物写真。「女性」を切り口に代表作のほか初期の作品、プロジェクト作品などが展示されている。作品の中の女性は誰もが人生を謳歌し、悩み、そして女性であることを誇っているようだ。
会場となった嶋臺ギャラリーは、明治16年(1883年)建築で伝統的町家建築の頂点とされ、京都を代表するギャラリーとして知られている。会場も作品も、どちらも経年しても褪せることない魅力を放っていて、西洋のアートと東洋の職人技との融合もみどころ。
女性は誰でも美しく、そして自分らしく生きていく権利がある。そう、彼の写真は教えてくれる。
●Liu Bolin(リウ・ボーリン) × Ruinart
y gion 京都市東山区弁財天町19
http://www.ygion.com/
12:00 – 21:00(月・火 24:00まで)入場無料
現代芸術家の旗手とされるリウ・ボーリン。個人的にぜひ会いたい、話が聞きたい人物のひとり。彼の作品が京都に来ると知った時、嬉しくて舞い上がった。
彼が、かつて「中国アートの天安門」と呼ばれたのにはワケがある。2005年あたりから開催される北京オリンピックに備えて近代化が進められた。そのために市街地に暮らす人々が住む家を追い立てられ、伝統的な街並みが無残に取り壊されたのは周知の事実。その強行への抗議として、初の写真作品シリーズ「Hiding in the City」を発表した。破壊直前の家屋の前に立つリウ・ボーリンそのものが、背景と同化し、その姿は透明人間のようになった作品が収められている。本展の「Hiding in the vineyards with the Ruinart Cellar Master (ルイナール最高醸造責任者とぶどう畑にて), Liu Bolin for Ruinart 2017年 ©Liu Bolin」は、その一連の作品を彷彿とさせる。以降も政治的・社会的問題 の影響を受けた作品を制作し、その中には、中国共産党のスローガンが描かれた壁の前に自身が立つというシリーズもあるほどだ。
そんな彼が最新作の題材に選んだのは、世界最古のシャンパーニュ・メゾン「ルイナール」。世界遺産にもなった白亜のシャンパーニュセラーや、ぶどう畑で自身や最高醸造責任者らにペインティングを施し撮影された作品は、見る側のアイデンティティーばかりか、自然との共存や環境問題、労働への意識などを問う。
同会場の6階では、日替わりで京都の名店が担当するルーフトップ(屋上)バーがオープン。ルイナールとアミューズで2,500円(税込)で楽しめる。薫風を感じながらのシャンパーニュは格別でした。
https://www.mhdkk.com/brands/ruinart/kyoto2018/kyotographie/
●Jean-Paul Goude(ジャン=ポール・グード)「So Far So Goude」
presented by BMW
京都文化博物館 別館 京都市中京区三条高倉
http://www.shimadai-gallery.com/
10:00 – 19:00、 入場料 1,200円 学生1,000円
ジャン=ポール・グードは世界各国の有力誌やシャネルなど有名ブランドの作品を手がける写真家。グラフィックアーティスト、デザイナー、映像監督など多岐にわたり活躍している。ファッションとアート業界にとって良き時代だった80年代を知り尽くした作品は、今も影響を与え続けている。どの作品もグラフィカルでオシャレ。計算しつくされた構図に80年代のパリを中心とした佳きものが見え隠れする。
国内初の本格的な個展だけあってインスタレーションも充実。KENZOをまとった坂本龍一さんの姿に「最期は京都で迎えたい」という彼の言葉を思い出した。
パリ装飾美術館で2012年開催の展示で披露された「シャネルジュエリーへの賛辞」のダンスパフォーマンスが再現されるので、こちらも見逃せない。
※KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2018 http://www.kyotographie.jp/
主催:一般社団法人KYOTOGRAPHIE 共催:京都市、京都市教育委員会。
◆Writing / 澤 有紗
著述家、文化コーディネーター、QOL文化総合研究所(京都市上京区)所長。
京都、文化、芸術、美容、旅や食などなどをテーマに雑誌・企業媒体誌などの編集・執筆を担当するほか、エッセイなどを寄稿。テレビ番組や出版のコーディネート、国内外の企業の京都、滋賀のアテンドも担当。万博の日本館にて「抗加齢と日本食」をテーマに食部門をプロデュースするなど、国内外での文化催事も手掛ける。コンテンツを軸に日本の職人の技や日本食などの日本文化を「経済価値に変える」「維持継承する」ことを目的に、コーディネート活動を行っている。
主催イベントとして、日本文化を考える「Feel ! 日本 -日本を感じよう-」と、自分を見つめ直しQOLを高める「Feel ! 自分-QOL Terakoya Movement ? 」を定期開催。
https://www.qol-777.com