台湾や中国からの客人に「あそこに行きたい」と、よく同行を頼まれるのが、あぶらとり紙の「よーじや」。京都を中心に10店舗3コーナーを展開している美粧品の老舗だ。数年前から「京都に行った。よーじや 😄 」などと、京女が手鏡をのぞき込む姿をイメージしたロゴ、色彩豊かな店内などがインスタやFacebookなどで拡散され、観光客の人気をさらにさらった。特に四条通に面した祇園店は、お土産を探す人であふれかえっていて入店もままならないほどだ。
ゆっくりと吟味したいと思うなら、寺町三条に新規オープンした三条店に行くといい。オープンしたばかりで、比較的すいている(今のところ)。1・2階はあぶらとり紙などの化粧品雑貨やコスメラインが並ぶショッピングフロア。3階は1人だけ施術を受けることができるエステブースとなっている。「人混みに辟易せずに、初めてゆっくり商品を見た気がする。レイアウトも見やすい」「店員さんに余裕が感じられて、感じがいい」「男の自分でも一人で買い物ができる」と、地元の評判も上々だ。
よーじやの創業は1904年。六角御幸町あたりで開業したが、当初の屋号は「國枝商店」だった。「楊枝(ようじ)」と呼ばれていた歯ブラシを扱っていたことから、今の屋号になった。看板商品のあぶらとり紙の発売は1920年ごろ。顔が隠れるほどの大きさの紙を、小さな手帳の形にしたところ大ヒット。舞台や映画関係者、花街の女性たちからブームの火がついた。現在は定番に加え、季節限定のあぶらとり紙を販売している。舞台や花街の化粧を支えてきた手鏡、筆、石鹸、おしろいや頬紅(チーク)などは特化しているが、化粧品雑貨のイメージが強いから、基礎化粧品のラインは、そこそこだろうと思いがち。しかし、予想に反して相当の実力派だ。商品開発を担当している企画開発事業部ディレクターの入江裕司さんは「本当はすごい、と真の実力がジワジワ浸透するのが理想なんです。UVカット商品などは開発時に冬季オリンピックの選手にモニターを依頼しました。京都の皆さんを中心にご愛顧いただき、これからも着実に発展していきたいと考えています」と話していた。
オープンのマスコミ発表会に参加したが、社長の國枝泰博さんの姿は無かった。京都の老舗の主人は、そのまま営業のトップであるから、必ずこういう時には現場に立つ。國枝さんは、あれこれアイデアを考えたり、商品を開発したりすることに注力して、表に出るのが好きでないらしい。この時代に、まことに不思議。帰りに三条近くの友人の家に立ち寄り、煎茶と末富の生菓子をいただいた。奥から現れた89歳になる彼女の祖父に話すと「國枝はんとこは、大八車で商いをしてたんや。一生懸命に家族で働いてあそこまで大きくなった。派手なことは嫌いで、コツコツや。頑固でこだわりが無いと商売は続けられん。今の社長は50代やったか、60代になったんやったかなあ…。表に出ない?それで、よろし(よろしい)」と、言った。
※価格はすべて税別
※よーじやグループ → http://www.yojiya.co.jp/
三条店は 京都市中京区寺町通三条上る天性寺前町
TEL:075-221-4501
営業時間は午前10時〜午後7時、年中無休
◆Writing / 澤 有紗
著述家、文化コーディネーター、QOL文化総合研究所(京都市上京区)所長。
京都、文化、芸術、美容、旅や食などなどをテーマに雑誌・企業媒体誌などの編集・執筆を担当するほか、エッセイなどを寄稿。テレビ番組や出版のコーディネート、国内外の企業の京都、滋賀のアテンドも担当。万博の日本館にて「抗加齢と日本食」をテーマに食部門をプロデュースするなど、国内外での文化催事も手掛ける。コンテンツを軸に日本の職人の技や日本食などの日本文化を「経済価値に変える」「維持継承する」ことを目的に、コーディネート活動を行っている。
主催イベントとして、日本文化を考える「Feel ! 日本 -日本を感じよう-」と、自分を見つめ直しQOLを高める「Feel ! 自分-QOL Terakoya Movement ? 」を定期開催。
https://www.qol-777.com