最近の中学・高校生は変わったなあ―。子どもや孫の姿を見て、自分の頃と比べてしまう人は多いでしょう。アサヒ・ファミリー・ニュース社が毎年秋に開いてきた私立中学・高校のイベントは今年で30回目を迎えます。平成から令和へ。この30年で中高生の学びと意識はどう変わったのでしょうか。教育と社会の関わりに詳しい関西学院大学教育学部(西宮市)の冨江英俊教授(48)に聞きました。(西本幸志)
「詰め込み型」から「対話型」へ
「30年前の1989(平成元)年。私が大学に入った時期ですね」と語り始めた冨江教授。第二次ベビーブームに生まれた当時の中高生は1クラスの生徒数が多く、「教師も一人ひとりに寄り添うことが今と比べて難しかったのでは? 中高は管理を重視して詰め込み型の授業が主流で、生徒も受け身でした」と振り返る。
現在は少子化で1クラスの生徒数が減少傾向にある。2000年代初めから中高で「総合学習」が始まり、自ら課題を見つけて考える問題解決能力を育てる動きが強まった。
「生徒と対話しながら授業を進める学校が増えました。コミュニケーション能力が重視される時代になっています」
「現在志向」で入試は大丈夫?
平成が幕を開けた30年前はバブルの全盛期。冨江教授は、「経済的に豊かであったせいか、統計数理研究所の『第8次日本の国民性調査』(1988年)によると、『まじめに努力していれば、いつかは必ず報われると思う』を79%が支持した。そのため、教師が一方的に知識を教え、暗記重視の勉強にも中高生は向き合っていたのでしょう」と話す。
対して、今の中高生は「現在志向」が目立つという。「日本の高校生の約8割は『学校が楽しい』と回答しています(国立青少年教育振興機構「高校生の勉強と生活に関する意識調査報告書」〈2017年〉)。時代の変化が激しいため、『将来よりも、まずは今を楽しむべきだ』との価値観が広がっている」と指摘。教師や友達との対話を通じて、自分のやりたいことを見つけていく傾向が強まっている。
20年度から大学入試制度が大きく変わる。冨江教授は「自分の頭で考えるには、一定の知識は必要で、今の『現在志向』だけでは思考力を高めるのに十分ではない。受動的・能動的な学習が連動する仕組みが必要だろう」と提言する。
男子校・女子校 校長先生はどう見る!?
情報社会の影響 より慎重に
最近の生徒は以前より慎重さが増しているように感じます。30年ほど前は目標に向かってすぐに行動する生徒が多かったのですが、今は動く前にいろいろと考えているように見えます。学びや進路について選択肢が広がったのは良い一方で、スマートフォンなどを通じて大量の情報と接するようになったことが影響しているのかもしれません。 ただし、生徒のまじめで素直、そしてエレガンスな気質は、今も昔も変わりません。これからも建学以来141年続く「自立した女性の育成」をめざし、生徒たちが主体的に考える力を育てていきたいと思います。
密接になる親子関係 個性大切に
この30年で最も生徒の変化を感じるのは、保護者との関係が密接になったことです。少子化で親子の時間が増えたためか、例えばクラブ活動の応援に来てくださる方も増えました。ただ、思春期は本来、親への反抗期。大切な自我の形成のためにも、子どもの学校生活や進路に介入しすぎるのは考えものですね。また、近年は推薦入試やAO入試などを実施する大学が増え、いわゆる「学力」で測れない才能や文化活動を評価する動きが広がっています。大学進学や就職など進路の選択肢がさらに増え、個性が生かせる時代が来ると良いですね。