待望の佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ(以下、佐渡オペラ)2018「魔弾の射手」の開幕までいよいよ6週間。4月末から兵庫県内5カ所で行われたハイライトコンサートは連日大盛況、センターでの2回のプレ・レクチャーも早々にソールドアウトと注目は高まるばかり。阪急西宮北口駅から会場の兵庫県立芸術文化センターへ向かうデッキにはためく旗が、今年はまもなく西北のまちへ飛び出し、祝祭ムードをさらに盛り上げます。今夏の佐渡オペラ「魔弾の射手」の魅力を3つの観点からわかりやすくご紹介しましょう。
1. 音楽がすごい!
ドイツ・ロマン主義を確立した記念碑的なオペラといわれる「魔弾の射手」の台本は、グリム童話の生まれたドイツに伝わる民間伝承をもとに作られた。深い森の奥に潜む妖気に人々が感じ取ってきた不思議な物語に、素晴らしい音楽を与えたのは作曲家カール・マリア・フォン・ウェーバー(1786-1826)だ。幼少時から父が結成した巡回歌劇団と各地に赴き、著名な音楽教師に師事したウェーバーは、豊かなイマジネーションの持ち主だったに違いない。早熟な才能はピアノの名手、名指揮者として開花し、各地の歌劇場で活躍した。
「作品の世界観は序曲から鮮明に表れる」と佐渡芸術監督が言う通り、聴衆は冒頭からある種神秘的な世界に引き込まれる。序曲は指揮者のコンクールによく使われる起伏に富んだ曲だ。芝居と音楽が密接に絡まりながら物語が進み、歌手の力量が問われるアリアでは曲の中でも感情が移り変わる。男声合唱の「狩人の合唱」やアリアの中に挟まれる弦楽器のソロも聴きどころ。想像力をかきたてる音楽に導かれて、聴衆もドイツの森を体感できる。
2.キャストがすごい!
「魔弾の射手」の上演が少ない理由の一つはキャスティングの難しさ。ドイツ語のせりふを含む上演は、歌手に語学力を求める。さらに主役のマックスはヘルデン・テノール(英雄的な力強い歌声のテノール)であることも求められる。その難題を前に今回は、現在考えうる最高のキャスティングが実現した。
Wキャストのマックス役はトルステン・ケールとクリストファー・ヴェントリス。ドイツ生まれのケールは今年2~3月にザクセン州立歌劇場でマックスに挑んだばかり。3回目の来日で待望の佐渡オペラ初登場を果たす。英国を代表するテノールのヴェントリスは、バイロイト音楽祭「パルジファル」で絶賛され、ワーグナー作品を中心に活躍する逸材だ。ヒロインのアガーテには、英国生まれでエッセン歌劇場(ドイツ)専属契約のジェシカ・ミューアヘッドと、ドイツ生まれで2011年からアーヘン歌劇場(ドイツ)専属歌手のカタリーナ・ハゴピアンが出演。このほかドイツで“ 宮廷歌手 ”の称号を持つ小森輝彦、髙田智宏、ベルント・ホフマンがそろうのも見逃せない。
3.演出がすごい!
大掛かりな仕掛けや整合性が課題となる演出も大きな見どころだ。今回、演出を担当するミヒャエル・テンメは長年ウィーン音楽舞台芸術大学でオペラ演技などを指導。数多くの優秀な歌手たちを育て「作品の本質を含め、オペラを知り尽くした人」と評価が高い。彼は佐渡芸術監督と「正統派の演出での上演」を決め、宗教上の対立による17世紀の三十年戦争後を舞台に生きる人々のリアルな空気感を大切にした作品となる。佐渡芸術監督が語るテーマは「過ちを犯した人間がどう救われるか」。複雑な問題が絡み合う現代においても、失ってはいけないものを考える機会となる作品といえるだろう。
物語が大きく動き始める第2幕後半からの狼谷(おおかみだに)の場面。射手の意のままに命中する7発の魔弾を鋳造する場面以降、芸術文化センターの舞台機構をこれまでにないやり方で演出に活用したスペクタクルなシーンは、観客の度肝を抜くに違いない。
前夜祭に参加して気分は最高潮!
佐渡オペラ恒例の前夜祭(主催:西北活性化協議会)が、今年も7月19日(木)、センター前の高松公園で開かれる。佐渡芸術監督も駆けつけるステージでは、オペラ「魔弾の射手」の見どころ解説や音楽演奏をはじめ、楽しく予習できるイベントが盛りだくさん。ぜひ行ってみよう!
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