劇団四季は2020年2月22日(土)から、京都劇場でミュージカル「パリのアメリカ人」を上演する。出演を予定する俳優の石橋杏実と岡村美南が、合同取材会で舞台への意気込みを語った。
第二次世界大戦に傷ついたパリの街に生きる若者たちが、新たな人生と愛を見いだしていく姿を描くミュージカルは、1952年のアカデミー賞を受賞した同名映画から着想。劇中に散りばめられたガーシュウィン兄弟の代表曲はそのままに、イマジネーション豊かなダンスシーンの数々を筆頭に、内容をさらにふくらませてスタイリッシュにミュージカル化した。14年にパリ・シャトレ座で初演後、翌年にはブロードウェーにも進出。トニー賞4部門を獲得するなど世界中で評価されている。劇団四季では19年1月に初演され、今回の京都公演は関西初上演となる。
「クラシックバレエがここまでふんだんに盛り込まれたミュージカルに出演できることが光栄」と話す石橋杏実はイギリスへのバレエ留学経験を持ち、コンテンポラリーやジャズなど多彩なジャンルのダンスに秀でる。「ダンスのほか、衣装やプロジェクションマッピングなど華やかな要素もたっぷりありますが、いちばん濃厚なのは物語のメッセージ性。戦争を経験した若者が、どう過去を乗り越え、生きる希望を見つけていくか。それが作品の大きな魅力だと思います」。自らが演じるヒロイン リズ・ダッサンは、バレリーナを目指す若者だ。「戦争中にかくまわれていた屋根裏でも練習するほど、ダンスが大好きな役柄。警戒心が強く、笑うことすらも忘れていた彼女も、人との出会いや愛によって、やがて大人の女性へと成長していく、その過程を感じてもらえれば」と話す。
過去にロンドンでの上演を鑑賞した岡村美南は、「なんておしゃれな振り付けなんだろう!と感銘を受けました」と、作品の演出・振付を担うクリストファー・ウィールドンが描く世界観に心酔する。バレエ界で名を馳せたウィールドンが、初めてミュージカルの演出を担当したのが今作だ。「舞台転換さえ美しく演出するところも魅力。“道具って踊るんだ!”と思いました」。絵画、音楽、ショービジネスとそれぞれの分野で夢を追う若者のパトロン役 マイロ・ダヴェンポートを演じる。「ハッピーエンドのラブストーリーの裏に、夢を追う若者たちが芸術を通して人生に光を見いだす成長物語。かつては地位も名誉も一人で手に入れてきたマイロが、芸術を愛する若者と絆を深め、成長していく姿も見てほしい」という。
■せりふよりも雄弁なダンスは圧巻
岡村が「ダンスから言葉が聴こえてくる」と表現するように、女性たちが戦地からの夫の帰りを待つオープニングをはじめ、情景をダンスのみで表現するシーンを随所に盛り込む。ある意味、せりふよりも雄弁に語るバリエーション豊かなダンスが、今作の大きな見どころだ。
圧巻は、14分間にわたり続くクライマックスのダンスシーン。「踊りながら、リズが“自分は自由になっていいんだ”と、別人に生まれ変わる14分間。せりふがなく、踊りだけで伝えるためには、自分が思っているその3、4倍はやらないと。より伝えるために、体や表情をどう使えばいいか?をいつも鏡の前で研究しています」と石橋。岡村も「ウィールドンの振り付けは、見ているこちらも踊りたくなるようなキャッチーさがある」とその魅力を語る。
めくるめくようなダンスが散りばめられた全編を彩るのは、「アイ・ガット・リズム」をはじめとしたガーシュウィン兄弟による不朽の名ナンバー。ストーリー、音楽、ダンス、舞台美術。ミュージカルの醍醐味すべてが詰まった舞台の幕は、もう間もなく上がる。
ミュージカル「パリのアメリカ人」京都公演
2020年2月22日(土)開幕 会場:京都劇場(JR京都駅ビル内)
11月17日(土)午前10時から一般発売開始 ※四季の会会員先行は11月9日(土)
あらすじ 第二次世界大戦後のパリ。アメリカの退役軍人ジェリーは、街で見かけたリズにひと目で恋に落ちる。画家として芸術に人生を捧げようとパリに残る決意をしたジェリーは、作曲家を目指すアダム、ショーマンにあこがれるフランス人アンリとともに、新たな人生を歩み始める。ある日ジェリーはアダムに連れられて訪れたバレエスタジオでリズと再会。アンリの愛する人もまた、リズだったのだ。恩のあるアンリと愛するジェリーの間で揺れ動くリズ。パリが支配から自由解放へと大きな変貌を遂げ、しだいに光が満ちていく中、夢を追いかける若者たちの恋と友情の行方は…。 |