兵庫県立芸術文化センターが、全面的な公演の再開に向けた第一歩として、新型コロナウイルス感染防止策を徹底した上で段階的に舞台芸術を上演する「心の広場プロジェクト」をスタートさせる。まずは今週、映像無料配信によるプレイベントが始まっている。
Meet‐HPAC リサイタルホールから
兵庫芸術文化センタ―管弦楽団(PAC)メンバーが自ら選んだ曲をリサイタルホールで無観客演奏した動画をYouTubeで順次リリース。演奏するのは本格的な室内楽からテレビなどでおなじみの曲まで。6月14日配信の第1回は、PAC3年目、チェロの佐々木賢二が自身も大好きなスポーツにまつわる曲を演奏した8分余りの動画が公開されている。冒頭には佐渡裕芸術監督による愛情あふれるメンバー紹介もある。
https://www.youtube.com/user/hyogopac
オーケストラ公演の再開に向けて~ディスカッションとデモ演奏~
6月19日(金)15時から、KOBELCO大ホールで行われる佐渡芸術監督と指揮者・下野竜也によるディスカッション(約45分)のあと、指揮者による曲目解説とPACによるデモ演奏(約45分)をライブ配信する。
【演奏予定曲】
ベートーヴェン:プロメテウスの創造的序曲(指揮:下野竜也)
ベートーヴェン:コリオラン序曲(指揮:佐渡裕) ほか
7月からは観客を入れたチャリティ公演がスタート!
そしていよいよ7月からは、兵庫県立芸術文化センターの各ホールに観客を入れて開くチャリティ公演をスタートさせる。公演はすべて休憩なしで約1時間(7/4公演のみ休憩なしで約90分)。「心の広場プロジェクト」の入場料収入は、ひょうご新型コロナウイルス対策支援基金(医療従事者への支援基金)へ全額寄付する。
感染防止策としては、各ホールの入場者数を定員の2分の1以下に制限し、前後左右を空けた指定席を、芸術文化センター先行予約会員限定で販売する(まだ会員でない人は購入時に会員登録できる。無料)。チケット購入は1公演1人2枚(本人と同伴者)までで、同伴者とも間隔を空けた席に座ることになる。未就学児入場不可。来場者にはマスク着用、入場時のサーモグラフィー検温で発熱(37.5度以上)の場合は入場できないなどの協力を依頼する。
PAC2019-20シーズン リバイバル室内楽
7月4日(土)14時から神戸女学院小ホール。PACメンバーによる室内楽公演。プログラムは決まり次第、ウェブサイトなどで発表。500円。【チケット発売6月21日(日)10時】
高本一郎~ゆったりコンサート~
7月11日(土)14時から神戸女学院小ホール。フランスでリュートを学んだ高本が「グリーンスリーヴス」「シチリアーナ」「ロンドンデリーの歌」などを演奏。500円。【チケット発売6月21日(日)10時】
剣 幸 朗読コンサート
7月18日(土)15時30分から阪急中ホール。1,000円。プログラムは当日のお楽しみ。【チケット発売6月27日(土)10時】
ワンコイン・アンコール・コンサート 酒井有彩
7月19日(日)14時から神戸女学院小ホール。2016年のワンコイン・コンサートで大好評だった気鋭のピアニスト。モーツァルト「ピアノ・ソナタ第11番」トルコ行進曲付き、J.S.バッハ=ブゾーニ「シャコンニヌ」ほか。500円。【チケット発売6月27日(土)10時】
能囃子コンサート
7月22日(水)15時30分から阪急中ホール。能楽の楽器や曲について解説付きで楽しむ。小鼓:成田達志、大鼓:山本哲也、笛:竹市学、太鼓:前川光範。1,000円。【チケット発売6月27日(土)10時】
どんな時も 歌、歌、歌! ~佐渡 裕の オペラで会いましょう
7月23日(木・祝)24日(金・祝)15時からKOBELCO大ホール。佐渡芸術監督率いるPACが管弦楽を演奏し、おなじみの歌手たちが登場し、オペラの名曲を届ける。ロッシーニ「セビリャの理髪師」より「俺は町の何でも屋」、プッチーニ「蝶々夫人」より「ある晴れた日に」、ヴェルディ「ナブッコ」より「行け、わが想いよ黄金の翼に乗って」ほか。出演:並河寿美、清原邦仁、水口健次、大山大輔、片桐直樹、ひょうごプロデュースオペラ合唱団メンバー。3,000円。【チケット発売6月28日(日)10時】
【予約・問い合わせ】
芸術文化センターチケットオフィス TEL0798・68・0255(10~17時、月曜休み※祝日の場合は翌日休み)
インターネット予約 http://www.gcenter-hyogo.jp
「心の広場プロジェクト」公演が8月以降も開催予定。詳細は決まり次第、センターのウェブサイトやメールマガジン、公式Twitterなどで発信する。
<筆者のつぶやき>
阪神・淡路大震災からの復興のシンボルとして、人々の心に温かな灯をともし続けてきた劇場と楽団が新型コロナウイルスの影響で活動を休止して3カ月余り。この10年、シーズン中は月に1度、PACの定期演奏会に出かけるのが暮らしのアクセントになっていた私は、心の中にぽっかり開いた穴にスースーすきま風が吹くような物悲しい気分がずっと続いていた。
このサイトに「PACファンレポート」を書き始めたのは2016年5月。第88回定期演奏会を指揮した下野竜也さんが演奏会を始める前に、前月に発生した熊本地震の被災地に心を寄せてバッハの「アリア」を献奏。演奏会終了後にはロビーでPACメンバーたちとともに募金を呼び掛けたことを紹介して以降、覚書のようなレビュー記事をせっせと書いてきた。3月の第122回、4月の第123回の定期演奏会は中止。大型連休前に「HPAC すみれの花咲く頃プロジェクト」が始まり、PACメンバーと佐渡裕芸術監督の元気な演奏姿を目にして少し元気になったものの、5月の第124回、毎夏恒例の佐渡芸術監督プロデュース・オペラ、6月の第125回も中止の連絡。さらに発売が延期されていた2020-21シーズンの定期演奏会は通常の形での実施は困難となり、定期会員券の発売中止も知らされた。わが街の劇場、わが街のオーケストラは、一体どうなってしまうのか? 1ファンの私以上に、佐渡芸術監督やPACメンバー、劇場で様々な仕事に従事されている皆さんの悲痛な心情を思うと言葉もなかった……。そこに舞い込んできた、うれしいお知らせ! プレスリリースを読みながら、思わず涙ぐんでしまいました。この取り組みが本格的な公演につながる第一歩となっていくことを心から願っています。ご注目をお願いします。(大田季子)