【完成報告会レポート】明石家さんまが企画・プロデュースした劇場アニメ映画「漁港の肉子ちゃん」が6月11日(金)から公開される。原作は直木賞作家・西加奈子が2011年に発表した同名小説(幻冬舎文庫)だ。公開に先駆けて5月26日に東京で完成報告会が行われた。
冒頭でさんまが「このような記者会見の場に出るのが久々なのですが、隣に大竹さんがいらっしゃると言うことは、再婚したほうがいいんですかね?」と冗談交じりに言うと、スタート早々、会場は大いに盛り上がった。続いてさんまは制作の経緯を披露。
書店で偶然見つけた西さんの直木賞受賞作「サラバ!」を読んで感動し、西さんの全著作を読む中で「漁港の肉子ちゃん」に辿りついたという。「大阪弁の使い方がすごくうまかったので、これはぜひ映像化したい」とすぐに動き、5年前に映画化の権利を得た。西さんは1977年テヘラン生まれの帰国子女で、帰国後は大阪に住み、関西大学を卒業している。
「最初はドラマで考えていましたが、2年前にアニメにすることを決めました。アニメは日本が世界に誇れる文化の一つ。間違いなく100点と言える作品になっているので、皆さんもぜひ見ていただけると嬉しいです」とアピールした。
豪華なボイスキャスト陣も話題だ。いつも全力、底抜けに明るくてパワフルな主人公・肉子ちゃんは大竹しのぶ。性格も見た目も肉子ちゃんと正反対の娘・キクコ役で声優に初挑戦したCocomi。キクコの同級生の少年・二宮を演じたのは「鬼滅の刃」竈門炭治郎役でブレイクした花江夏樹。ほかに、下野紘、吉岡里帆、マツコ・デラックスらも出演している。
監督は「ドラえもんのび太の恐竜2006」などを手掛けた渡辺歩監督。アニメーション制作は圧倒的なクオリティーと世界観で世界中にファンが広がるSTUDIO4℃が手がけた(肉子ちゃんが時々トトロに見えるのはそのせいかも?)。
登壇した大竹は「本当に良い映画です。西加奈子さんの原作もとても素敵で、完成した作品もすごくあたたかくて、さんまさんってこんなに良い映画を作る人なんだなと思いました(笑)。映画館が再開して、安心して皆さんに見てもらえることを強く強く願っています」とあいさつ。
揺れ動く少女の心情を透明感のある声で繊細に表現したCocomiは「神秘的な美しさもあり、ハートウォーミングな作品になっています。いま落ち込んでいたりする方がいたら見ていただけたら嬉しいです」とあいさつした後、「家族と一緒に試写を見たんですが、家族全員が目が充血するほど泣いていました。私も普段は泣かないんですが、たくさん泣きました」と明かした。さんまは「役的には難しかったと思いますが、よくクリアしたなと思いました。彼女はフルートもやっていて音楽のセンスも光るものがあるので、音符で関西弁を覚えていたんですよ!『ちゃうやん』の一言も音符で覚えていて、1発OKでした!」とCocomiを褒めた。
花江は「家族の絆や、肉子ちゃんのパワフルで明るい性格で、力強く背中を押してもらえる作品になっています。素敵な作品に参加させていただいて光栄」と話し、親の立場になって初めて肉子ちゃんの気持ちがわかったという。「肉子ちゃんが食べるシーンに出てくるご飯が全部おいしそうなので、おなかが空いてるときに見ない方がいいですね」と笑いながらアドバイス。
渡辺監督は「完成と同時に終わってしまうのがとても寂しく感じます。ついにこの時が来たかという思いですね。“普通が一番ええのやで”という肉子ちゃんの言葉のように、普通の良さを感じてもらえる普通の映画です」と、思いを込めてあいさつした。
ステージには、劇中で主題歌「イメージの詩」(作詞・作曲:吉田拓郎)を歌った2011年生まれの人気子役・稲垣来泉も駆けつけ、6月14~19日にフランスで開かれる「第45回アヌシー国際アニメーション映画祭」のオフィシャルセレクションから正式招待を受けたことが発表された。“アニメ界のカンヌ”とも呼ばれる映画祭で、ピクサーやドリームワークスなどのアニメ作品が招待される枠で上映されるという。
<あらすじ>食いしん坊で能天気な肉子ちゃんは、情に厚くて惚れっぽいから、すぐ男にだまされる。一方、クールでしっかり者、11歳のキクコは、そんな母・肉子ちゃんが最近ちょっと恥ずかしい。そんな共通点なし、漁港の船に住む訳あり母娘の秘密が明らかになるとき、二人に、最高の奇跡が訪れる――。