今年は200回記念YEAR!山本能楽堂「初心者のための上方伝統芸能ナイト」スペシャル公演続々

2006年に山本能楽堂と大阪商工会議所の共同企画としてスタートした「初心者のための上方伝統芸能ナイト」が7月31日(土)の公演で200回を迎える。

商人の町・大阪は、「能楽」「狂言」「文楽」「上方舞」「落語」「講談」「浪曲」「お座敷あそび」など多彩な芸能を生み育んだ“芸能の都”でもある。人々に愛され、途切れることなく上演されてきたこれらの芸能の中から毎回、4つ以上のジャンルを取り上げて、そのハイライトを上演。観客の体験コーナーを設けたり、全て英語の公演を実施したり、毎回、英語・中国語・韓国語の字幕を付けたり、工夫を凝らした上演を重ねてきた。

今年は「200回記念YEAR!」と銘打って豪華にお届けする。7月5日、これまでこの舞台を盛り上げてきた出演者たちが勢ぞろいして記者会見が開かれた。

200回記念YEAR!「初心者のための上方伝統芸能ナイト」記者会見に参加した皆さん。(後列左から)菊池まどか、桂春蝶、桂吉坊、桂かい枝、竹澤宗助。(中列左から)豊竹呂勢太夫、内海英華、豊竹呂太夫、奥村旭翠、吉田簑二郎、吉田玉助。(前列左から)山本章弘、旭堂南春、旭堂南海、小笠原由祠、春野恵子=7月5日、山本能楽堂で

第1回の企画から参加している桂春蝶さん(落語)は「この会はデパ地下の試食コーナーみたいなもん。お客さんは好きにつまみ食いしていただけたら」と話し、豊竹呂太夫さん(文楽・太夫)は「上方ぶりの演者たちが互いに交流して、新しい挑戦もできる貴重な会」とたたえた。

8月21日には鴈治郎の忠信と文楽人形の静御前が初共演

文楽の出演者や内容については、竹澤宗助さん(文楽・三味線)が毎回考案しているという。「斡旋やの宗助です」と笑わせた後、8月21日(土)には、文楽では「道行初音旅」、歌舞伎では「吉野山」で知られる狐忠信と静御前の名場面を、歌舞伎の中村鴈治郎の忠信と、文楽人形の静御前(吉田簑二郎)のコラボレーションで届けると発表。「人間と人形が同じ舞台で演じる、恐らく初めての舞台です」。会見場には顔を出せなかった鴈治郎さんは「これまでにご覧になられたことのないものをお見せいたします」とコメントを寄せた。

浪曲の春野恵子さんは「山本能楽堂の舞台は、生の声がどこまでも響いていく心地よさがあります。入門10年の修業が終わって、出演していた時に、山本佳誌枝事務局長に『英語で演じてみたら?』とアドバイスをもらい、みんなで一緒に英語浪曲を制作し、初演したことが海外公演のきっかけにもなった」と話す。

浪曲を自然な英語で表現しようとする恵子さんを助けたのは講談の旭堂南春さんだという。アメリカ・アトランタ生まれの南春さんは、日本の歴史が大好き。最初は観客として足を運んでいた山本能楽堂で、英語の司会をするようになり、故・4代目旭堂南陵さんと出会って入門したという。「山本能楽堂がなければ、私もここにいません」

山本能楽堂の山本章弘さんは「私の父の世代には、米朝師匠を中心に祇園で上方芸能の演者の方が集う『上方風流(かみがたぶり)』と呼ばれる会がありました。父が入れていただいていたその会への憧れがあり、私の世代でもできればと『初心者のための上方伝統芸能ナイト』を始めさせていただきました。携帯電話の普及で、演者さんに直接連絡を取ることができるようになったこともご縁が広がる助けになりました。大阪は多ジャンルの芸能をする人たちが多く住む街で、街中で顔を合わせることも多いんです。これからは多様性が一番大事になってくる時代です。このご縁を次の世代にもつないでいきたい」と話した。

当日参加できなかった、上方舞山村流五世宗家・山村友五郎さんは「色々な上方の芸能を集めての公演は大変なこと。この後400回、500回と続くことを願っています」とコメントを寄せた。

7月31日(土)200回当日はおめでた尽くし

200回記念YEAR!「初心者のための上方伝統芸能ナイト」の公演日と出演者は下記の通り。会場は国登録有形文化財の山本能楽堂(地下鉄谷町4丁目)。「ナイト」の名称ではあるが、今年度の開演時間は12月31日を除き、各日とも15時開演(14時30分開場)で約2時間。感染予防の観点から、例年行ってきた体験コーナーは実施しない。

7月31日(土)■おめでた尽くしお祝いスペシャル!

女道楽:内海英華、落語:桂ちょうば、狂言:善竹隆司ほか、筑前琵琶:奥村旭翠(人間国宝)、能:山本章弘ほか

記者会見での奥村旭翠さんコメント「おめでたい曲をと頼まれましたが、筑前琵琶の曲は『~むなしくなりにけり』というものばかりで、なかなかおめでたいものがないのです。2曲ばかりある中の那須与一を披露する予定です」

 

8月21日(土)■4代目鴈治郎氏をお迎えしての超スペシャル!

落語:桂吉弥、文楽:吉田簑二郎ほか、講談:旭堂南海、能:山本章弘ほか、歌舞伎:中村鴈治郎ほか

 

9月25日(土)■これぞ上方の魅力スペシャル!

落語:桂吉坊、浪曲:菊地まどか、文楽または素浄瑠璃:出演者未定、上方舞:山村友五郎、能:山本章弘ほか

記者会見での菊地まどかさんコメント「今日はこの後、東京五輪のアーティスティックスイミングで日本代表が演技する曲を収録しに行くんです。この曲にもご注目くださいね」

 

10月30日(土)■上方落語スペシャル!

落語:桂吉坊、桂春蝶、桂吉弥、能:山本章弘ほか

記者会見での桂吉坊さんコメント「上方舞の友五郎さんも以前おっしゃっていましたが、気軽に来て質の高いものを見ていただく。芸はお客さんと一緒に育てていくものだと思います」

 

11月27日(土)■英語公演スペシャル!

司会:旭堂南春、英語落語:桂かい枝、英語講談:玉田玉秀斎、英語浪曲:春野恵子、上方舞:山村友五郎、能:出演者未定

 

12月31日(金)■日本の年越しスペシャル!

21時30分開演(21時開場)で約3時間、年末恒例の特別公演を特別料金で。

落語:桂ちょうば、女道楽:内海英華、浪曲:菊地まどか、文楽:出演者未定、能:山本章弘ほか

 

2022年1月29日(土)■記念すべき第一夜スペシャル!

落語:桂春蝶、講談:旭堂南海、狂言:小笠原由祠(ただし)、素浄瑠璃:豊竹呂太夫・竹澤宗助、能:山本章弘ほか

記者会見での小笠原由祠さんコメント「私は学生時代に狂言を見て新鮮で面白いと感じて入門しました。パリにいる息子は日本の伝統芸能はリスペクトされていると言います。映像ではなくライブでないと感じられないものを感じてほしい」

 

各公演の料金は正面席4,500円、ワキ・2階席3,500円(12月31日はそれぞれ1,000円増し)。予約・問い合わせは山本能楽堂、TEL06・6943・9454へ。ホームページからも予約できる。

山本能楽堂のホームページはコチラ http://www.noh-theater.com

 

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