3月10日(金)公開の映画「Winny」(松本優作監督・127分)は、2002年に起きた実際の事件に基づいて制作された劇映画だ。簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発した技術者、金子勇を東出昌大が演じ、彼とともに裁判を戦い無罪を勝ち取った弁護団の一人、壇俊光を三浦貴大が演じた。公開前のプロモーションで来阪した三浦さんに話を聞いた。
【壇俊光弁護士役の三浦貴大さんインタビュー】
――事件当時から関心があったそうですが?
僕も当時からインターネットを使う方だったので、当時「Winny」というソフトがあって、作った人が捕まって一審で有罪でした、というところまでは知っていました。作った人が捕まるの? なんで? インターネットやパソコンを作った人は捕まらないのかなと思った覚えがあるんですが、深くは調べなかった。その後、無罪になりましたというニュースを聞いた時に、無罪になったんだ、ずいぶんかかったんだなと思いました。
ドラマや映画で法廷シーンを見ることが多かったので、この作品で、実際の法廷はこんなにシンプルなのだと知りました。壇弁護士本人が映画にも関わってくださり、実際の裁判記録に沿って模擬裁判のようなことをしていただきました。裁判のシーンでしゃべっている時にどこを見ているのか、どこに手を置いているのか、書類の持ち方なども具体的に勉強させていただきました。
そういう部分とは別に、壇さんとお話しさせていただく中で、壇さんから見た金子さんを知れたことがすごく大きかったと思います。
芝居をするうえで、人間関係が形作る空気感はとても重要なものですが、普段はフィクションの人物を演じることが多いので、自分の想像の中でしか作れません。しかし今回は、壇さんが金子さんのことを語っている時の表情や声色を見て、すごく仲のいい兄弟について話しているような温かさを受け取ったんです。弁護士とクライアントという関係性を超えて、壇さんは金子さんの人間性をすごく好きだったんだろうなと感じました。
――松本監督の脚本にも引き込まれたそうですね?
実際にあった事件を扱っていますから、監督は弁護団に取材を重ねて脚本にしたそうです。楽しく面白く台本を読ませていただき、読んで、金子さんの人柄を初めて知りました。金子さんは非常にピュアな方ではないかと思います。自分が知っていたのは「逮捕・起訴されて裁判になって、一審では有罪、最高裁で無罪」という結果だけ。その中には実はこういうドラマがあって、こういうやり取りがあってということを知れたのが興味深かった。世の中のことで自分が知っていると思っていることは、上っ面だけなんだなと改めて考えさせられました。
僕が演じた壇さん本人はIT系に詳しい弁護士として「技術者が捕まるなんて、ありえんやろ」というところから関わっていきました。そこから金子さんに触れていって「まぎれもない天才である。この人が社会的に拘束されている状況、訳が分からん」と思ったのだと思います。きっと2人でしゃべっていて楽しかったんでしょうね。壇さんも僕が見ていてオタク気質なところがあるので、気も合ったのかと。
東出くんもよく言っているけど「壇さんは金子さんのことを年上の弟のように見ていた」んだと思います。
現場に入った瞬間から、東出くんがあまりにも金子さん過ぎたので、僕は全く苦労しませんでした。「この人だったら、壇さんと同じような目線で見れるな」。そんな感じでした。
――共演の吉岡秀隆さんが公式ホームページのコメントで「東出くん、三浦くんが素晴らしい。とても勉強になりました」と褒めておられます。
撮影中、吉岡さんと現場が一緒になったのは一度だけなのですが、本当にありがたいと思います。吉岡さんのことはすごく尊敬していますし、吉岡さんが出ている作品も見て、いつもすごいなと思っています。その吉岡さんに褒めてもらえるって本当にありがたい。
――以前の取材で「吉岡さんがいると現場の空気が変わる」と言われた監督さんもいました。
本当にそうだと思います。映画は空気感がすごく大事。一人で作れるものではなくて、共演者たちと一緒に作っていくものです。吉岡さんは常に周りを見ている人で、今回ありがたいことにダブル主演の東出くんと僕が、2人の空気感みたいなものを出せている。そんなふうに見ていただけたのかなと思います。
――ほかにも秋田弁護士役の吹越満さん、金子さんを勾留した警察・北村文也 役を演じた渡辺いっけいさんら、実力派の皆さんが出演されています。
吹越さんや渡辺さんとの現場は、半端じゃない緊張感がありました。映画の撮影は、カメラを回さないで行う段取りをやってから、テスト、本番になるのですが、あの2人の掛け合いは段取りの時からすごい。まるで映画を見ているようで、絵になっているんです。2人がやっている後ろに僕がボーッと立っていて「はい、NG!」みたいになってもいかんと、すごい緊張感の中にずっといました。
撮影中から、どういう映画になるんだろうな? 重苦しい映画になるのかなと思っていたのですが、とても面白い映画になっていたので驚きました。
この事件を資料映画でなく、劇映画にするという時点で、まずエンターテインメントにしなければなりません。ちゃんと映画として2時間ちょっと、飽きずに見られる作品にするって本当にすごい。取材を重ねた事実とエンタメの要素とのバランスが素晴らしい。2021年の夏、撮影した当時はまだ20代だったと思いますが、松本監督はバランス感覚が非常に優れた力量のある監督だと思います。ぜひ劇場でご覧ください。
――ありがとうございました。
「Winny」公式サイトはコチラ https://winny-movie.com/
©2023映画「Winny」製作委員会