神戸市室内管弦楽団・神戸市混声合唱団 2024シーズンを発表
開館50周年の記念オペラ「ファルスタッフ」も

神戸市民文化振興財団は、神戸市室内管弦楽団と神戸市混声合唱団の2024年度プログラムを発表した。室内管弦楽団・鈴木秀美氏と混声合唱団・佐藤正浩氏の両音楽監督がそろって4年目となるシーズン。神戸文化ホールという一つの拠点で、二つのプロフェッショナル音楽団体が活動する全国的にも珍しい特徴を生かし、多彩なプログラムを企画している。また、神戸文化ホール開館50周年記念事業として、12月にはヴェルディ・オペラ「ファルスタッフ」を上演する。

2024年度の企画を発表した神戸市混成音楽合唱団の佐藤正浩音楽監督(左)、神戸市室内管弦楽団の鈴木秀美音楽監督

ベートーヴェン「英雄」を心ゆくまで

神戸市室内管弦楽団は5回の定期演奏会を予定。新シーズンは4月13日(土)の第162回定期演奏会「英雄が時代を拓く」で幕を開ける。ベートーヴェンの交響曲1番、5番、6番、7番、8番を既に演奏した鈴木が、満を持して第3番「英雄」に挑戦。モーツァルトの3大交響曲の中から、同じ変ホ長調の39番とともに、名曲には名曲の組み合わせで心ゆくまで聴かせる。

鈴木秀美
©K.Miura

11月23日(土・祝)の第165回定期演奏会は「ジャン=ギアン・ケラスを迎えて」。世界中を飛び回り、いま最も注目されるチェリストとされるケラスを招き、自身もチェリストである鈴木と、サン=サーンスの名曲「チェロ協奏曲 第1番」を共演で届ける。ハイドンからパリ交響曲の一曲、パリへのオマージュを込めたラヴェルの名曲も聴き逃がせない。

ジャン=ギアン・ケラス
ⒸHiromichi Nozawa

6月、9月、11月にも定期演奏会があり、9月14日(土)の第164回定期演奏会「光さす闇」は、ベルリンの歌劇場コミッシェ・オパーの第1カペルマイスターを務める八嶋恵利奈の日本デビュー公演として話題を集めそうだ。7月13日(土)には長田区文化センター別館ピフレホール、来年3月1日(土)には東灘区文化センターうはらホールでも神戸市室内管弦楽団・セレクションのコンサートがある。

八嶋恵利奈
©Todd Rosenberg

鈴木氏は「『英雄』は非常に大きなドラマやさまざまなものが描かれ、ベートーヴェンの中でも最も好きな曲でもあります。彼を敬愛していたモーツァルトとの組み合わせでお届けします。また今、世界で最も有名なチェリストであるケラス氏の来神は願ってもないチャンス。ぜひお客様に楽しんでいただきたい」と抱負を述べた。

初の委嘱作品「レクイエム」に注目

神戸市混声合唱団の定期演奏会は2回。9月28日(土)に秋の定期演奏会「現代の祈りといにしえの世俗」と題し、合唱音楽界をリードする松下耕による委嘱作品「混声合唱、室内オーケストラ、ピアノのための『レクイエム』」を世界で初めて上演する。2022年の定期演奏会で共演し、合唱団の特性を知り尽くて筆を進めた松下が、ピアノと神戸市室内管弦楽団からの器楽を加え、どのような作品を披露するかに耳目が集まる。ルネサンスから初期バロックの無伴奏合唱曲との対比も楽しめる。

佐藤正浩

来年3月29日(土)には春の定期演奏会「阪哲朗の合唱」。ヨーロッパの多くのオーケストラや歌劇場で指揮し、現在は山形交響楽団常任指揮者、びわ湖ホール芸術監督を務める阪哲朗が、ドイツロマン派を代表するメンデルスゾーン、シューマンや、大学時代の恩師である廣瀬量平の合唱曲に光を当てる。

阪哲朗
ⒸFlorian Hammerich

定期演奏会と別に、5月11日(土)には、NHK全国学校音楽コンクールと全日本合唱コンクールの課題曲にプロの合唱団が挑む「合唱コンクール課題曲コンサート」も予定されているほか、来年1月17日(金)には「阪神・淡路大震災30年メモリアルコンサート」を、佐藤の指揮により、東灘区文化センターうはらホールで開く。

佐藤氏は「合唱団は創設されて30数年経ちますが、お願いして我々のために作品を作っていただくことはありませんでした。松下氏には先に合唱団を把握していただき、魅力をプラスするとするとレクイエムという話になって。管弦楽団から10人程度参加していただき、合唱団と楽団がある神戸らしい新作をお届けしたい」と意気込んだ。

「ファルスタッフ」 神戸らしい新演出で

さらに、神戸文化ホールが昨年から3年間のシリーズで展開している開館50周年記念事業の一環として、12月21日(土)には、ヴェルディ・オペラ「ファルスタッフ」を、佐藤正浩の指揮、神戸市室内管弦楽団の演奏、神戸市混声合団の合唱で上演する。

岩田達宗

大作曲家ヴェルディの最後の傑作とされる同作を、神戸出身の演出家・岩田達宗が新演出。ファルスタッフ役を日本オペラ界を牽引する黒田博が務めるなど、豪華キャストが勢ぞろいする。アンサンブル・オペラの名作に、一つのホールという同じ屋根の下、魅力を高め合ってきた二つの音楽団体がどんな新境地を開くのか、今から期待が高まる。詳しくは夏頃に発表予定。

新シーズンへ意気込みを見せる両音楽監督

佐藤氏は「ファルスタッフ」について、「とてもうれしい企画が持ち上がりました。岩田氏とはデビューが一緒であったりして、ずっと戦友のような気分でやってきました。50周年の記念ですので、楽しく、みんなが笑って終われる作品であると同時に、やはり価値のある作品をお届けしたいと二人で考えています」と胸中を明かした。

鈴木氏は新シーズンの間に阪神・淡路大震災から30年の節目を迎えることに触れて、「音楽が心の慰めになることは歴史的に証明されているし、能登半島地震に関しても、できることがあればお手伝いしたい。さまざまなことを乗り越えて進んできた神戸の力を結集して、魅力ある演奏とオペラを楽しんでいただきたい」と語った。




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