現代版「白鳥の湖」を西宮で3月上演 貞松・浜田バレエ団
森優貴が演出・振り付け 「美しい家族と魂の物語」

「もっと指先を伸ばしてみようか」「腕はそこまで回すとちょっとやりすぎ。もっと優しく包み込むようにしてみよう」。神戸市灘区の貞松・浜田バレエ団の稽古場。約40人の団員を前に、演出・振付家の森優貴さんの鋭い声が響く。音楽に合わせて、姿勢や動きを細かに確かめ、誰も知らない新しい「白鳥の湖」が研ぎ澄まされ、少しずつ姿を表していく。

団員に熱心に指導する森優貴=神戸市灘区の貞松・浜田バレエ団で

貞松・浜田バレエ団は3月16日(土)17日(日)15時から、兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール(西宮北口)で、古典の名作「白鳥の湖」を現代版に新制作した「The Lake」を世界で初めて上演する。演出・振り付けを務めるのは、日本人で初めてヨーロッパのダンスカンパニーで芸術監督に就任するなど、目覚ましい活躍を続ける森優貴。チャイコフスキーの不朽の名作からエッセンスを抽出し、森が現代翻訳を加えて、新しい世界をつくり出す。稽古にも一層熱が入る。

稽古に熱が入る貞松・浜田バレエ団の団員たち

国や時代を越えて生き延びてきた古典には素晴らしい伝統や文化があります。一方で、今を生きる演出家の一人として、現代の情勢や感じることを、作品に反映させて作り変えたいという気持ちも持ってきました。今作は人生の中で一度はやってみたい挑戦です」と森は意気込む。

「唯一無二の『白鳥の湖』をお届けしたい」と意欲を燃やす森

創作のきっかけになったのは4年前に始まったコロナ禍。家庭や社会の中に分断が生まれるのを感じ、人間同士の関わりや、身体、そして生命について深く考え始めたと振り返る。「死は万人に訪れるものですが、私たちは死は未知であり無知。身体は亡くなっても魂は生き続けるのではないでしょうか。善と悪、白と黒。二面性が以前から知られてきた『白鳥の湖』を通して、生と死の先にある『新しい旅』を描きたい」と森は話す。

森が新演出する「The Lake」は、人々の複雑な心の動きをテーマに掲げる。悲運の事故で亡くなった娘、そんな過去に囚われた母親、孤独の中で成長した息子、現実から逃避する父親。この4人を軸に、悲しみを携えながらも今を生きる人々とその魂たちが湖畔に集い、互いに共感し、癒やし合い、生き続けることの意味を、切なくも美しい「家族と魂の物語」として、力強い舞いとともに紡ぎ出す。二幕でロマンチックなチャイコフスキーの王道の曲を使う一方、一幕ではドラマチックな現代曲や映画音楽などを取り上げて変化をつける。両幕にコントラストをつけ、「白鳥の湖」が持つ二面性を際立たせる狙いがある。

心を一つにして舞台が出来上がっていく

「お芝居や映画を撮るように、演技は細かく指導をつけています。全員が同じ方向を見て、隙間のないように作っていきたい」と森。音楽から読み取れる世界観を大切にしつつ、揺るぎない不朽の名作に、どんな新しい生命が吹き込まれるのかに注目だ。自身も15歳でジュニアバレエ団に入団し、高校卒業の1年後にドイツへ渡るまでを過ごした貞松・浜田バレエ団。「人格形成で最も大切な10代後半を、のびのびとした環境と思いやりのある指導で過ごさせてくれました。唯一無二の『白鳥の湖』を作り上げ、バレエにとって何が一番大切なのかを伝えたい」と意欲を見せる森。直前まで熱い創作と稽古が続く。

A席5,000円、B席4,000円。全席指定、税込み。未就学児入場不可。チケットの予約・問い合わせは芸術文化センターチケットオフィス、℡0798・68・0255(10~17時、月曜休み。祝日の場合は翌日休み)。https://www.gcenter-hyogo.jp   貞松・浜田バレエ団は、℡078・861・2609へ。

 

■貞松・浜田バレエ団 3月公演 新制作 白鳥の湖 「The Lake」公式サイト

https://sadamatsu-hamada.fem.jp/the_lake/index.php

■YouTube【The Lake|ザ・レイク 】新制作 白鳥の湖 より、リハーサル風景を初公開!

https://www.youtube.com/watch?v=BmogVKL_gPY

https://youtu.be/tX2zEsV64fQ?si=bWzcAmIw_djnRQgW




※上記の情報は掲載時点のものです。料金・電話番号などは変更になっている場合もあります。ご了承願います。
カテゴリ: エンタメ