日本海・香住から直送! 蟹と魚と香住鶴
【カサバ】大阪・天満
香住を訪れたのは、何年か前、水産加工業者さんの会合に参加したときだった。そこで知ったのは、魚好きの私にとって楽しい蘊蓄ばかりだった。なにしろ香住の水産加工の技術は素晴らしく、干物の味はピカイチなのだ。そのときに出会ったのが、明治12年創業、香住の老舗加工会社「北由商店」の北村晃一さんだった。大阪で蟹と魚の店をやっていると聞いて、大喜びで出かけたのだった。
そのとき行ったのはお初天神の近くにある「香住 北よし」で、蟹と魚料理、そして香住の地酒を味わえる。水槽には、香住から直送される魚が泳ぎ、タグ付きの蟹もゆらゆらと動いていた。香住の蟹は漁期が長く、春と秋は紅ズワイ蟹と黄金蟹がとれるため、夏場以外は新鮮な蟹が味わえる。地酒は香住鶴の生原酒があり、大阪にいながら日本海の味を堪能できるのは、たまらない魅力だ。
「香住の魚の良さを多くの人に伝えたい。干物の美味しさを知ってほしい」と、常々言っていた北村さんは、そのうち天満に新店をオープンした。これがカサバだ。魚屋としてスタートして、立飲みスペースを設けた。目の前の水槽から蟹を選んで、刺身と焼きガニに調理してもらう。蟹まるごとをカジュアルな立ち食いで、というのはなかなか無い。それに、造りも干物もとびきりの味だ。なんといっても北村さんで5代目という目利きの歴史がある。
そして昨年、カサバのすぐ近くで蟹ラーメンの店も始めた。香住の紅ズワイガニをふんだんに使った濃厚なダシがベース。自社工場で大量に蟹を茹でるから、市場には出せない見かけの悪い蟹をラーメン用に使える。だから、蟹醤油ラーメンが500円というリーズナブルな値段で提供できるのだ。
今、カサバも通常営業はできていないため、魚の販売に加えて、弁当や総菜のテイクアウトを始めた。蟹ラーメンも自宅で食べられるように素材パックを開発した。
カサバブランドで東京進出も果たしていたが、東京では外で蟹を食べる文化がないこと、香住の知名度が低いことで苦戦を強いられていた。そこへ緊急事態宣言だ。
北村さんは、蟹ラーメンの店に業態変更をするために、クラウドファンディングに挑戦する。状況の変化に素早く対応する柔軟さは、ほんとに見習うべきだなぁと思う。
早く、ここで香住の美味しい蟹と干物を食べたい。特に好物のハタハタのやわらかい身に香住鶴を冷やで。その日を楽しみにシーズン最後の蟹を買って帰った。
※緊急事態宣言中はテイクアウトのみ
営業時間11:00~17:00
◆ MENU(税別)
香住鶴 500円
香住鶴純米 600円
生酛 香住鶴1合780円、2合1,560円
サバへしこ500円
干し明太子280円
◆ Data
●カニとサカナの場 Casava(カサバ)
電話:06-6135-1165
住所:大阪市北区天神橋5丁目2−9
通常営業時: 15:00~22:00
休み:火曜
●香住 北よし お初天神店
電話:050-5266-0479
住所:大阪市北区曾根崎2-10-19 河合ビル 2F
◆ Writing / 松田きこ
(株)ウエストプラン代表。兵庫県西宮市在住。食・観光・人物取材に日本中を飛び回る。ライター歴20年以上。編著書「神戸・阪神間 おいしい酒場」「くるり西宮・芦屋・東灘・灘」「くるり丹波・篠山」他
http://www.west-plan.com/