秋の夜長は馬刺しの甘みに焼酎ソーダ割

関西・オンナの美酒佳肴

 【九州・沖縄料理 元町 蘭引】神戸・元町 

蘭引は、JR元町駅から鯉川筋を北へ歩いてすぐの場所、Y字路の端にある小さな店だ。「いつも前を通っていたけど、ずっとラーメン屋だと思いこんでいた」という友人と2人でカウンターに座る。早い時間なので、お客は私たちだけ。といってもカウンターは全部で6席、2階は4人のテーブル席、外にも立ち飲み的なテーブルがあるだけ。

さっそく熊本から直接仕入れている馬肉を8種盛でオーダー。薬味は柚子胡椒と生姜、タレをつけて食べると、霜降りとイチボはねっとりと甘味が舌にからみつく、バラ・ハート・タン・フタエゴ・もも、どれも濃い旨みがあふれ、タテガミはとろりととろける。

実は友人は生ものが苦手で、馬刺しは人生でまだ2度目だそう。私は馬刺しを食べるとカッカと体が熱を持つような感じになる。この時もそうで、血のめぐりがよくなったのか汗がじんわりでてきた。となりで躊躇しながら箸をのばした友人だが、「おいしい!」とあっという間に食べてしまった。冷凍ではないから、肉質もよく、旨みもたっぷりなのが蘭引の馬肉なのだ。

綺麗な琉球ガラスのグラスで出された米焼酎「武者返し」の炭酸割が、肉の脂を流して口中をさっぱりとさせる。熊本へ仕入れに行ってきたばかりだと言うマスター、田中裕始さんの話によると、蔵元の寿福酒造場は、減圧蒸留ブームの波にも乗らず、味の個性がはっきりと出る昔ながらの常圧蒸留を続けていた人吉市の焼酎蔵だそう。

もうひとつの名物は自家製さつま揚げ。具を2種類選ぶと、その場で魚のすり身に具を練り込み、こんがり揚げて、あつあつの状態で供される。他に具は、紅生姜、刻みわさび、チーズ、からし蓮根等があるので、次は違うものを頼んでみようと思う。

そしてモズクの天ぷらは、サクッと香ばしくて磯の香りとほどよい塩味がいい感じ。他の店で食べるようなねっとり感がないのはなぜだろうと尋ねると、「お客さんが、ねっとりしたのが苦手だと言うので、たくさん試作してようやくねっとりなしのサクサク感を出したんです」とマスター。ねっとりも好きだけど、サクサクもいける!

カウンターの向こうで忙しく立ち働くマスターに、いつも笑顔の奥さん。なんとなく居心地がよくて、女性の一人客をよく見かける。ウーロン茶で馬刺しを食べていく人がいるように、馬刺しは外せない店だ。私たちもこの日は名物3種類を食べて大満足で店をあとにした。

 



◆ MENU(税込)

馬刺し8種盛り
薩摩揚げ 1個350円(2個から)
もずくの天ぷら750円


◆ Data

九州・沖縄料理 蘭引
電話:078-391-6695
住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通4-1−14
営業時間:16:00~24:00、【日・祝】14:00~ 閉店は早ければ20:00頃
定休日:月曜日

◆ Writing / 松田きこ(ウエストプラン)
http://www.west-plan.com/

 

※新型コロナウイルスの感染拡大防止のため対策した上で取材・撮影しています。
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