JR西日本と、富山・石川・福井の3県でつくる北陸三県誘客促進連携協議会は、早春の北陸の魅力を発信する「Japanese Beauty Hokuriku」キャンペーンを3月31日(木)まで開催している。「日本の美は、北陸にあり。」をテーマに、美食、美観、美技、美湯、美心の5つの美をキーワードに、北陸らしい旅の魅力が実感できる企画を各地で用意している。感染症対策を取りながら、観光客を温かく迎えようと力を注ぐ地元関係者のコメントとともに、富山、石川、福井の3回に分けて紹介する。
特急「能登かがり火」で和倉温泉へ
話題の「映えるお寺」でホッと一息
富山県の高岡を後にし、次は石川県の和倉温泉へ向かう。北陸新幹線・新高岡駅から1駅、約10分で金沢駅へ。そしてJR七尾線を走る特急「能登かがり火」に1時間ほど乗って、和倉温泉駅へ着いた。時間が合えば観光列車「花嫁のれん」に乗ることもできる。
お目当ての温泉を前に、いま和倉で最もホットなスポット「青林寺」に立ち寄る。温泉街の路地を抜け、階段の先にある山門をくぐると、明治25年開創の曹洞宗の名刹が雪の木立を背景に堂々としたたたずまいで迎えてくれた。
この寺には明治42年、当時皇太子だった大正天皇の休憩所として建てられた御便殿(ごべんでん)が移築されており、国登録有形文化財に指定。その立派な建物の奥に広がる庭のライトアップを2年前に始めたところ、「SNS映えする」と大人気になった。2月26日までの毎週土曜には和倉温泉宿泊者を対象に、「ライトアップ&ティータイム」を開催。ライトアップを愛でながら、能登島で栽培している希少価値の高い和紅茶「いやひめ」と、七尾の銘菓「ながまし」のもてなし(1人1,500円、要予約、和倉温泉観光協会=電話0767・62・1555)で受けられる。
濱田晃瑞住職の説明の後、照明が落とされると、真っ暗な庭が赤、青、紫、緑と幻想的に色を変えていく。雪の静寂の中、1枚の絵を見るような美しさで、心がしっとりと落ち着いた。濱田住職は「今では多くの方が訪れてくださるようになり、大変ありがたいことです。温泉街の皆さんも頑張っておられるので、1日も早く以前の温泉街が戻るように毎日お祈りしています」と話した。
「加賀屋」はまるで美術館
格別の時間を生む 最高級の食とおもてなし
この日の宿は和倉温泉を代表する「加賀屋」へ。新聞や旅行サイトなどの各種調査で、もてなし、料理、施設、企画、すべてにおいて常にトップクラスに君臨する名旅館だ。明治36年創業。最大1,400人以上が一度に泊まれる館内は、「雪月花」「能登渚亭」「能登客殿」「能登本陣」の4棟からなり、一つの街のようにとても広い。その規模ながら、きめの細かいサービスはどこまでも徹底され、七尾湾の穏やかな海の眺めとともにとっておきの思い出を作ってくれる。
広い館内にはロビーや階段など至るところに貴重な美術品が置かれ、そんな価値ある美術品を湯番頭のガイド付きで見て回る「館内は美術館ツアー」が人気。昨年12月からは自身で巡る「リモートツアー」も加わった。案内してくれた加賀屋の担当者は、「館内にたくさんの美術品を置いているのは、訪れた皆様に非日常のくつろぎを味わっていただきたいからです。どんな状況でも最高のおもてなしで、お迎えできるようにしています」と話した。
ガイドツアーの後は、お楽しみの温泉にどっぷり。温泉は源泉が約80度と高く、海の温泉ならではの豊富な塩分が特長のナトリウム・カルシウム塩化物泉。無色透明で湯心地がとても良く、冷えた体が芯からしっかり温まった。そして、ズワイガニや能登牛などが豪華にそろう夕食に舌鼓。うまいもののオンパレードに、心も緩み、この日はぐっすり眠った。
カニで赤く染まる近江町市場
市民の食を支える300年の心意気
翌朝は再び特急で金沢駅へ。駅前からバスで約5分の近江町市場で朝のにぎわい体験から始めた。
金沢市民の台所として、加賀藩政時代から親しまれてきた近江町市場は今年開設300年。鮮魚や干物、野菜、果物、精肉などの食料品店が所狭しと軒を連ね、入り組むアーケードの通路を歩くと、威勢の良い掛け声が左右から耳に飛び込んでくる。そしてこの季節、とりわけ鮮やかな朱色で目に焼き付くのが王者、ズワイガニ。上品な甘みとギュッと凝縮された旨味のある味わいは、まさに冬の味覚の王者だ。
水揚げされる港によって、松葉ガニ、越前ガニとブランド化が進む中、近年頭角を表してきたのが「加能ガニ」。石川県が2006年に名付けたブランドガニで、脚に付く青色の証明タグが目印だ。今シーズンからは、重さや甲羅の幅、身の詰まり具合など、より厳しい基準をクリアした雄ズワイだけが認定される「輝(かがやき)」が加わり、さらに存在感がアップした。
近江町市場で鮮魚店を営む大口水産代表取締役専務の荒木優さんは「今年は高値が続いていますが、鮮度と味には絶対の自信があります。近江町は普段の買い物をする市民と観光客が共存しているのが良いところ。300年に合わせて、より親しまれる市場づくりをめざしたい」と気合を入れる。
着物と人力車のお得なセットプラン
雪吊りの兼六園は水墨画の美しさ
金沢に来たら、兼六園や金沢城公園も外せない。これまで何度か訪れているので、今回は趣向を変えて「金沢着物観光」に挑戦。藩政時代からの町並みが色濃く残る金沢を着物姿で楽しんでもらおうと、着物レンタルと人力車、スイーツがセットになったお得なプランが用意されている。
兼六園そばの「VASARA 金沢兼六園店」で着物を選び、着付け後は兼六園入り口近くでの茶屋「見城亭」で黄金ぜんざいを堪能。そして、情緒あふれる主計町やひがし茶屋街へ人力車で出かけるプラン。寒い日にうれしいカイロも付き、車夫の軽妙なトークと合わせて、ほのぼのと、ひと味違う旅気分が味わえる。金沢観光人力車・浪漫屋代表の寺川展史さんは「希望や予算に合わせて時間がコースを選んでいただけます。いつもと違ったスタイルと目線で金沢を楽しんでいただければ」と話す。
兼六園に入ると、シンボルのことじ灯籠が真っ白な雪をかぶり、雪吊りも文字通り雪化粧して、雪に閉ざされた園内と薄氷が張った池のコントラストがまるで水墨画のような風情を見せていた。雪に包まれた冬の石川。表向きにはモノトーンに見える町にも温泉にも、内面には華やかな加賀百万石の歴史と文化、冬ならではの繊細な味わいがぎっしり詰まっている。心満たされる時間が過ぎた。
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「Japanese Beauty Hokuriku」キャンペーン
3月31日(木)まで開催中
デジタルスタンプラリーも
JR西日本では「Japanese Beauty Hikuriku」キャンペーンに合わせ、JR西日本公式アプリ「WESTER」を使った「デジタルスタンプラリー」を3月31日(木)まで開催中。北陸3県の5つの美にまつわる対象施設への訪問や、食事・体験・宿泊などでスタンプをゲット。スタンプ獲得数に応じて、北陸ならではの食や伝統工芸品が当たるチャンスがある。北陸3県をすべて周遊してスタンプを集めると、当選確率が5倍になる。
京阪神から北陸への旅行には、「北陸乗り放題きっぷ」がおトクで便利。特急「サンダーバード」の往復普通車指定席またはグリーン車指定席と、北陸フリーエリア内3日間乗り放題(北陸新幹線・特急・普通列車自由席)がセットになって、大人1人あたり普通車指定席利用の場合、大阪市内発着15,850円(子ども一律3,000円)など。2人以上利用で前日までに購入。
記事で紹介した各企画やきっぷについて、詳しくは「JRおでかけネット」へ。
https://www.jr-odekake.net/navi/hokuriku-w7/jbh/