昨年12月に開業した「星野リゾート リゾナーレ大阪」は「想像を超えて、記憶に残るリゾートホテル」をコンセプトにしたリゾナーレブランドの全国6番目のホテルです。関西初登場のリゾナーレは「ハイアット リージェンシー 大阪」とのコラボレーションホテルとしてデビュー。イタリア発の先進的な乳幼児教育「レッジョ・エミリア・アプローチ」を採用した日本最大級のアトリエを備え、親子で特別な非日常体験が味わえる上質な都市型リゾートです。福本博隆総支配人とアトリエを協働で運営する「まちの研究所」の松本理寿輝代表に話を聞きました。
――大自然の中でアクティビティと食体験が楽しめる星野リゾートのサブブランド「リゾナーレ」は、これまで北海道のトマム、沖縄の小浜島、八ヶ岳、熱海、那須などに展開され、残念ながら関西ではなじみが薄いホテルでした。なぜ、大阪・南港に開業したのですか?
福本 ハイアット リージェンシー 大阪の高層階から見える大阪湾の風景に着目しました。これだけ広大な海を一望できる場所はなかなかありません。
アトリエの2方向にある大きな窓からは、どちらからも海が見え、空の広がりも感じられます。さんふらわあ号も停泊し、大阪メトロのニュートラムの基地にはカラフルな電車が並び、物流拠点なのでトラックの往来も盛ん。風景としてユニークで、子どもたちが見ても大人が見てもすごく楽しい。時間帯によって表情が変わるのも魅力で、日没のサンセットビュー、夜景も面白い。そういうリゾート感を感じていただけると考えています。
――総支配人は「真にファミリーフレンドリーなシティホテルを目指したい」そうですが、それには何が必要でしょうか?
福本 リゾナーレは「大人のためのファミリーリゾート」を掲げています。子どもと大人、それぞれに満足できる体験があり、子どもと大人で楽しめる体験がある。3つのシーンを提供していくことが大事だと思っています。
「リゾナーレ大阪」では、ハイアットのクラブラウンジやレストラン、アフタヌーンティーなどで大人のリッチな時間を体験しながら、同時に子どもにリッチな時間を提供できることがすごく大事だと考えました。大自然に負けないぐらい、子どもたちが夢中になって遊びこめるものは何かと考え、アトリエを開設しました。両方が一つの建屋の中で完結していることが、都市型のリゾナーレとして大事なポイントだと思っています。
――アトリエで子どもたちはどんなリッチな体験ができますか?
松本 大阪湾を一望できる最上階にあるアトリエは広さ約470平方㍍。12歳以下の子どもが利用でき、「創造力を遊びこむ」がコンセプト。ここでは様々なモノとの〝出会い〟を通じて子どもたちに内在する感性を呼び覚まし、創造力を育む体験を提供します。
レッジョ・エミリア・アプローチの経験から私たちは「ある種の文化との出会いが、子どもたちにとって価値のある出会いにつなげられる」と感じています。そこで、ここでは子どもたちがワクワクし、好奇心をかき立てられる文化に出会ってもらうことにしました。
アトリエに入った子どもたちは「いろんなものがある!」と直感できるでしょう。
入ってすぐの「興味エリア」のギャラリーには今「あつまる」をテーマに大阪のモノづくり企業から提供された素材や、アーティストが提供するインスタレーションを展示しています。気になるモノを見つける「探索エリア」では、布などの工芸品や自然物、工業製品、プロが使う絵筆、500色の色鉛筆などを用意。プロジェクターに投影して光と影を感じたり、ライトテーブルに砂絵を描いたりできます。表現を深めるプロジェクトを実施する「表現エリア」では、現在「色のプロジェクト」を行っています。遊びに没頭する中でそれぞれの子どもたちの個性が輝き始めます。
福本 松本さんと話して、遊ぶにも三段活用があると知りました。遊びだす、遊ぶ、遊びこむ。最後は遊びきるというところまでいきます。集中して没頭する状態が「遊びこむ」。自分の中から出てくるもの、興味を持ったものに没頭してほしいと思い「創造力を遊びこむ」をコンセプトにしました。
松本 私たち大人も心が動く環境がここにセットされていることが大きいと思います。ビューもアトリエも大人のための施設も、大人の心が動く空間を作っていくということ自体が、大人と一緒にいる子どもたちにも「本物」として伝わります。子どものための環境だけを整えるのではなく、大人も子どももワクワクする環境が、ここに作れたのではないかなと思っています。
――アトリエには子どもたちをサポートするアトリエリスタがいますね。
松本 アトリエリスタは6人いて、バックグランドは様々。美術教師、写真家、音楽の専門家、洋服のパタンナーなど、いろいろな価値観を持っていて、いろいろな考え方をする人たちです。
子どもはもともと自分の中に個性を持っていて、いろいろな「モノ」「こと」「人」に出会うことで「こういう風な考え方すると面白いな」「こういう風にはなりたくないな」といつも選択しています。子どもたちがいろんな人と出会えるのも、アトリエの良さかもしれません。
アトリエリスタは、子どもの経験に対する保護者の思いや家庭での子どもたちの様子をしっかり聞きながら、「絵画エリアが楽しいかもしれません」「粘土で造形してみませんか」など、子どもたちが興味を持ちそうな領域をご紹介したりします。
――「レッジョ・エミリア・アプローチ」を一言で言うと?
松本 子どもたちの創造的思考を育むことにフォーカスしています。子どもたちに、自分の見方、感じ方、考え方を大切にしてほしい。それが育まれていくように、共感して伴走して、時には刺激も与えながら、子どもたちが自分で創造していくことを楽しんだり、自分の経験として豊かにつなげていくことができるようにしていきます。結果的に「自分は創造することができる(Creative Confidence)」という自信を持てるように、私たちは子どもたちを応援していきたいなと思っています。
――「自己評価が低い」と言われる日本人にとって、小さい時に認められた経験、褒められた経験は子どもにとってとても大事ですね。
福本 最近デジタルの普及で、子どもたちもタブレットを持っていたりしますが、昔は路地裏で拾ってきた石だったりがとても大事なものになっていたりしました。少なくなってきたそういうアナログな経験を違った形で、今だからこそリアルに体験してもらいたい。「素材と戯れる」「自分で好きな表現を選ぶ」……遊びの中に表れる個性を面白がってくれる人がいることは、子どもたちにとって面白い経験になると思います。
松本 子どもたちは全身を使っていろいろなものに出会っていきます。デジタルはデジタルで一つあると思いますが、リアルな、アナログなものと楽しみながらの多彩な経験は、私たちの社会の創造性を拡大したり、子どもたち自身の人生を豊かにしていくためにも大事なことなのかなと思います。
――小さい子ども連れの家族は、人出が多い休日「子どもが騒ぐと迷惑だから」と出掛けるのがおっくうになりがちです。
福本 乳幼児連れで出かける家族は、車で出かけることが多いというデータがあります。ここには330台の駐車場があり、公共交通機関を使っても梅田から30~40分です。
子どもたちがアトリエに滞在している間は、保護者もわが子の様子を見守りますが、表現を深めるプロジェクト(滞在中に60分の同一プログラムで最大5回実施・予約制)に参加している間は、大人はゆっくり自分たちの時間を過ごせます。
松本 子どもとの遊び方の選択肢に悩まれる方もいらっしゃるかもしれませんが、アトリエで子どもたちの遊んでいる様子やどんな道具で遊ぶのかを見ていると、親として子どもと遊ぶ時の新しい引き出しも増えてくるかもしれません。
――ありがとうございました。
【星野リゾート リゾナーレ大阪(ハイアット リージェンシー 大阪 内)】
所在地:大阪市住之江区南港北1-13-11 客室数:64
宿泊料:
アトリエルーム トリプル 1泊18,000円(1室あたり、税・サ込み)
アトリエルーム デラックス 1泊36,000円(1室あたり、税・サ込み) ※いずれも食事なし、別途宿泊税が必要
アトリエ滞在料金:15,000円(子ども1泊1人あたり、税・サ込み) ※0歳児は無料