北陸新幹線の金沢駅~敦賀間がいよいよ3月16日(土)に開業する。福井・加賀エリアと首都圏が直結すると同時に、大阪・京都・名古屋方面は新幹線と特急を敦賀で乗り継ぐ形となり、北陸へのお出かけ事情が大きく変わる。2月にあった試乗会での体験をもとに、主に関西からの利用者が知っておきたいポイントをまとめた。
金沢~敦賀間の約125キロを延伸 6駅を新設
今回開業するのは金沢~敦賀間の約125キロ。1997年に高崎~長野、2015年に長野~金沢と順に整備されてきた北陸新幹線がさらに延びる形で、北から順に、小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の6駅が設けられる。多くが並行する北陸本線の駅に併設され、越前たけふ駅だけが独立駅となる。
2012年に工事実施計画の認可を受け、約12年を経ての開業。今後は小浜(福井県)、京都、松井山手(京都府)を経由して新大阪まで整備される計画だが、着工時期は決まっていない。並行する北陸本線の金沢~敦賀間はJR西日本から分離され、石川県と福井県の境に近い大聖寺駅(加賀市)から北はIRいしかわ鉄道、南はハピラインふくいに変わる。
大阪⇔福井 1時間44分 大阪⇔金沢 2時間9分に短縮
北陸新幹線の延伸開業に伴い、現在運転されている特急「サンダーバード」と「しらさぎ」は、敦賀駅発着となり、敦賀を挟んで往来するには、新幹線と特急の乗り換えが必要になる。JR西日本では、大阪発着の「サンダーバード」と接続する北陸新幹線「つるぎ」を1日25往復運転。新幹線の速達効果により、最も速いケースで、大阪~福井は1時間44分(3分短縮)、大阪~金沢は2時間9分(22分短縮)で結ばれる。
敦賀駅で乗り換え スムーズな動線に工夫
北陸新幹線の敦賀駅は在来線ホームの東側にできた。3階は新幹線、2階は乗り換えコンコース、1階は在来線特急の3層構造で、地上から高さは約21メートル。全国の整備新幹線の中で最大規模の駅になった。大阪方面から北陸へ向かう場合、「サンダーバード」は1階ホームに到着。エスカレーターや階段、エレベーターを使って2階に上がり、乗り換え改札を通って、新幹線ホームのある3階へ向かうことになる。復路は逆コースだ。従来の在来線ホームとは跨線橋を通してつながっている。
「サンダーバード」は関西と北陸の旺盛な移動需要を背景に、編成の長い列車が多い。実際にホームやコンコースを歩いてみると、利用車両によっては移動距離や時間が長くなることは避けられないと感じた。JR西日本では、特急別に色分けした案内表示を充実し、動線をわかりやすくするなどして、乗客がスムーズに乗り換えできるように工夫して対応するとしている。
おすすめ車窓 自然派は右 まち派は左
今回開業する金沢~敦賀間は、停車駅が少ないタイプで約40分、各駅停車でも約1時間で走り抜ける。実際に敦賀から金沢まで乗り通してみると、揺れの少ない新幹線の乗り心地も手伝って、本当に近く快適になったと感じた。
あっという間に過ぎる車窓だが、敦賀発の場合、自然が好きな人には右側がおすすめ。石川県に入ると白山の美しい姿を眺めることができ、さらに富山から新潟方面へ向かうと立山連峰のダイナミックなパノラマが迎えてくれる。
左側からは沿線に広がる北陸の町並みが楽しめる。敦賀駅を出てすぐ左下には敦賀の町の向こうに日本海。越前たけふ駅から芦原温泉駅にかけては、武生、鯖江、福井、坂井と、町ごとに個性がある北陸らしい落ち着いた景色が続く。並行する在来線も各所で顔を出す。試乗会時に見られたような特急列車との並走はもう見られないが、時には様々な車両たちが目を楽しませてくれるだろう。
新潟・信州も近くに スキー、リゾートにも期待
北陸新幹線の延伸によって、富山、石川、福井の北陸3県は一体化が一気に進みそうだ。敦賀駅での乗り換えが新たな利用法として定着すれば、スピードアップのメリットを享受する人が増えると思われる。地震で大きな被害を受けた能登地方でも、復旧作業の進捗に合わせる形で観光の取り組みが本格化してくると見られる。
関西人にとっては今回の敦賀延伸で、新潟、長野方面がさらに近づいたことも見逃せない。かつて北陸本線には「シュプール号」というスキー列車が走っていたが、今後は北陸新幹線が信越方面へスキー、スノボに出かける際のメインルートになりうる。野沢温泉、志賀高原、軽井沢などのリゾート地にも新幹線によってアクセスが大幅に良くなる。朝、大阪を出れば午後にはゲレンデに立ったり、山あいの温泉にゆっくり浸かることも可能になった。大阪までの全線開業が待ち遠しいところではあるが、北陸新幹線はさまざまな期待と可能性を乗せて走り出す。