現代日本を代表する美術家、横尾忠則さんが1984年から取り組んできた公開制作を振り返る展覧会「横尾忠則 大公開制作劇場~本日、美術館で事件を起こす」が、1月26日(土)から神戸市灘区の横尾忠則現代美術館で開かれる。
初日には、同館では5年半ぶりとなる公開制作をオープンスタジオで開催(観覧無料)。「人に見られることで余計な自我やこだわりが消え、無心状態で制作できる」ことを発見して取り組んできた横尾さんが作品に取り組む姿と出来上がっていく作品を、開館時間中随時、観覧できる(無料)。
前日に開かれた記者説明会で横尾さんは公開制作について「観客の視線を背中に感じながら、その想念や思念を一身に受け止め、操り人形のように人前で作品をつくること」と説明。「観客がいる点で演劇的ではあるが、台本・シナリオがなく、いきなり現場に立ち、限られた時間で身体の要求に従って描いていく。予定調和がないことを、この展覧会を企画した学芸員の林優さんは『事件』と呼んだが、自分がどこにさらわれていくのか、スリリングで不安な状態は、航海の地図を持たずに大洋に出航していく船のようなものだ」という。
公開制作の現場に立った時に何も決めずに最初の一筆を描いたこともあるそうだが、今回の公開制作のテーマは先ほど決めたと明かした。「この展覧会のカタログ表紙の自分の写真(2005年の熊本市現代美術館での公開制作風景)を見て、まるで17世紀のフェルメールの絵のようだと思った。向こうに見える滝のポストカードはマンハッタンの夜景に見えた。それでひらめいた。21世紀の今、僕がこの写真をテーマに公開制作したら面白いと」。そう話した後で、「だけど自分の言葉を自分自身が裏切っていくことも公開制作なので、やってみないと、どうなるかわからない」と煙に巻いた。
出品点数は絵画・版画64点(うち2点は公開制作ではない作品を含む)。展覧会名に“劇場”という名を付けただけあって、展示は「第一幕 1984-1986:なぜ事件は起こったか」「幕間 1989-1999:事件はどこかに潜んでいる」「第二幕 2004-2012:Y字路が事件を呼ぶ」の3部構成となっている。公開制作した作品の展示だけではなく、制作のプロセスがわかる貴重な記録写真や映像を同時に紹介する。今回公開制作する作品も、制作過程の映像とともに展示されることになるという。
会期は5月6日(月・振休)まで。月曜休館※ただし、2月11日(月・祝)は開館、翌12日(火)が休館。※4月29日(月)から会期終了までは休館なし。開館時間は10時~18時(金・土曜は20時まで)※入場は閉館の30分前まで。観覧料は一般700円、大学生550円、70歳以上350円、高校生以下無料。
【期間中の関連イベント】会場はいずれも同館1階のオープンスタジオ
〇キュレーターズ・トーク
2月9日、3月16日、4月20日の各土曜14時から、担当学芸員が見どころをわかりやすく解説する。時間は45分間。参加無料(要・展覧会チケット)。
〇キュレーターズ・トーク(手話通訳付き)
2月11日(月・祝)10時~10時40分、担当学芸員が見どころを手話通訳付きで解説する。参加無料(要・展覧会チケット、一般:350円 大学生:250円 高校生以下:無料)。※障害者手帳ご提示者(ご本人)優先、手帳ご提示者1人につき介護者1人無料。
〇百花繚乱華舞台
3月3日(日)14時から、横尾さんと縁のある大衆演劇「劇団澤村」による舞踊ショーを開催。出演は三代目澤村謙之介、天海翼(若座長)、天海翔、澤村一也ほか。化粧や着替えなど、普段は見られない舞台裏も舞台上で見せる。無料。
〇ワークショップ「重なるイロとカタチ」
5月3日(金・祝)13時30分~16時、横尾忠則作品から「重なり」の表現を学び、オリジナル作品をつくる。講師は同館スタッフ。対象は小学生以上20人で、事前申し込みが必要で参加費は別途。申し込みは下記ホームページ内のイベント申し込みフォームから。4月24日(水)締め切り。応募多数の場合は抽選。