あなたは終活していますか? 終活は「死」を意識するネガティブな面よりも、「今をより良く生きるため、家族が幸せに暮らし続けるための備え」と肯定的にとらえる人が増えています。行政書士・ケアマネジャーとして、介護や終末期医療の現場で数多くの事例に接してきた坂本貴政さんに、「終活」について聞きました。 (扇田京子)
話す場を作るのが親の務め
終活というと、多くの人はエンディングノートや遺言書を用意することだと思われるでしょう。確かに、突然倒れ、救急搬送された病院で「手術しますか?」 「延命治療しますか?」などと尋ねられたら、ほとんどのご家族は、どうしたら本人の意に沿うのかわからないかもしれません。エンディングノートがあれば、何もないよりも家族の助けになるのは確かです。
しかし、時々見聞きするのは、亡くなった人の家族が「エンディングノートや遺言書があるのかないのか、あるのならどこにあるのかわからない」 「通帳が何冊あるのか、資産はあるのかどうかが、そもそもわからない」と、駆け込んで来られたという笑えない話。
また、2人のきょうだいに遺産を平等に分ける遺言書が用意されていましたが、兄は自営業の資金繰りに困っていて、妹は裕福な家庭の主婦。兄が不服を訴えて泥沼化してしまいました。
いずれも、生きているときに話をしていれば、避けられたかもしれません。終活を考えるなら、「どう分ける」「自分はこうする」と書面を残すことより先に、直接話し合う場を作ることが親の務めではないかと思います。残された者がいがみ合うことなく幸せに暮らすために必要なのは、法律やルールではないし、エンディングノートや遺言書も万全ではありません。普段からコミュニケーションを図る——これに勝る終活はないと思います。
専門職が機会を設ける
多くの事例を見聞きした中で、死後の葬儀や花を含め、どうしてほしいか書面に残し、見事な旅立ちをした人はわずか5人、しかしそのうち4人がクリスチャンだったのは偶然ではないと思います。生前、生死について牧師さんや神父さんと日常的に話していたからではないでしょうか。地域コミュニティーやお寺などがそんな場になっていくといいですし、私たち医療や介護の専門職が場を作っていきたいとも思っています。例えば親子で参加して、親が話すのを聞いて望みがわかることもあるでしょう。意思を親族に限らず誰かに伝えておくことは、これからますます必要になってくると思います。
チェックリスト
あなたは用意できていますか?
リストをもとに、各項目ができているかどうか家族でチェックしながら、話し合ってみてください。
- 緊急時の連絡先
- 介護が必要になったらどうしてほしいか
- 認知症になったら、どうしてほしいか
- 延命治療をしてほしいかどうか
- 最期はどんな場所で迎えたいか
- 葬儀はどのようにしてほしいか
- 訃報(ふほう)を知らせる連絡先リスト
- 財産の整理と分配
- 遺言書
- エンディングノートに使うノート