イタリア文化会館-大阪は、京都で450年の伝統を持つ樂焼窯元の15代目で陶芸家の十五代楽吉左衞門(楽直入氏)が、自身の芸術活動とイタリアの関わりについて語るビデオ講演「十五代吉左衞門・楽直入:イタリアと我が芸術」の公開を3月26日から始めた。
コロナ禍で海外渡航が容易ではない中にあっても、WEB上でイタリアと日本の交流を続けようと、「文化は歩みを止めない」をスローガンに2020年5月特設されたイベントサイト「IIC Osaka EVENT ONLINE」。安藤忠雄、喜多俊之、新宮晋の3氏に続くビデオトークシリーズ「イタリアの偉大な友達」の第4弾として、約1時間半にわたる注目のインタビューが披露されている。
千利休の時代から日本の茶の湯文化を支えてきた樂焼の茶碗たち。十五代樂吉左衞門(当時は楽直入氏)は1973年、東京芸術大学彫刻家を卒業後の2年間をローマで過ごした。伝統ある家に生まれ、樂焼を受け継ぐ運命のレールが幼少の頃から目の前に引かれる中、自分の意志で人生を掴み取れないもどかしさと抵抗を感じ、逃亡するように渡ったとの告白からインタビューがスタートする。
映像では樂焼が生まれた頃をミケランジェロが活躍した同年代と紹介。長い歴史を背負うゆえに自己懐疑の渦中にあった直入氏が、イタリアが持つ強烈な芸術のエネルギーに刺激されていく過程が淡々と語られる。感性を尊重すると同時に、論理的な思考も大切にするイタリアの芸術と人たち。ヨーロッパと日本の決定的な差異への気づきが、自身のアイデンティティーや創作意義を浮かび上がらせ、帰国して茶碗づくりに打ち込むことにつながっていく。「ありあまる時間の中で、とても重要なことをイタリアは教えてくれた。コンピューターのOSのように、今でも感性や思想の基礎になっている」と振り返る。
「イタリアはとても恩のある国です」と同国への深い思いを吐露する十五代樂吉左衞門。動画の終盤では国外初の樂焼の展示となった1997年のファエンツァ国際陶磁器博物館での展覧会の紹介もあり、懐かしい貴重な写真とともに当時を回顧する場面も見どころだ。
日本の伝統芸術が、異なる環境にある物や文化との接触や刺激を受けて進化し、美しく昇華されていくことを示す十五代樂吉左衞門のインタビューは、イタリアと日本の深いつながりを感じさせるとともに、世界で人とモノの往来が復活しつつある今、国際交流と文化的な出会いの大切さを改めて伝えてくれる。
イベント特設サイト「IIC Osaka EVENTI ONLINE」
https://eventionl.net