92歳の現役女優・河東けいさんの伝記をまとめた井上由紀子さんの著書「そんな格好のええもんと違います」が注目される理由とは?

 神戸市灘区在住のフリー編集者、井上由紀子さん(72)が昨年11月末に著した「~生涯女優 河東けい~そんな格好のええもんと違います」(発行所・クリエイツかもがわ)が阪神間を中心に注目を集めている。

「書名の『そんな格好ええもんと違います』は河東さんの言葉から取ったものなんです」と話す井上由紀子さん

 

 河東(かとう)けいさんは1957(昭和32)年に結成された関西芸術座の創立メンバーの一人で、25(大正14)年大阪市生まれの92歳。今は東灘区に住んでいる。全国で650回近く上演した「奇蹟の人」のサリバン先生、獄死したプロレタリア作家・小林多喜二の母を演じるひとり芝居「母」(三浦綾子原作)などが代表作だ。

 「母」は3年前からひとり語りの朗読劇となり、今も月2回ペースでの上演が続いているが、井上さんは初めて聞いた時の感動を今も鮮明に覚えているという。「動きがない分、言葉の力がすごいんです。新劇女優として60余年のキャリアを持つ河東さんの語りの技術に圧倒されました」

 

 河東さんの歩みを本にしようという機運は、これまでにも何度か持ち上がったが実現しなかった。本人への聞き取りや関係者への寄稿依頼などを進めていた「『生涯女優 河東けい』を出版する会」から井上さんが引き継いだのが2016年末。それから約1年をかけてようやく本にまとまった。

「引き継いでから10回以上お会いして、いろいろな話をお聞きしました。時代の主な出来事を書いた年表を作り、その時河東さんが何をしていたのかを書き込み、その当時の社会の様子や演劇界の状況などもできる限り調べました」

 その苦労が実り、戦中戦後の東京での若い人たちの生活の様子、大阪や阪神間の街の移り変わりや様々な演劇集団の気風なども記述の中に生き生きと描かれて興味深い。

 書き終わった後の方が河東さんと会う機会が増えたと言う井上さんは、河東さんの魅力を次のように話す。「私とちょうど20歳年の差があるのですが、現役の女優として語り続けている強さ、戦争体験者ならではの平和への思いの強さに感服します。92歳になっても社会に発信していこうという姿勢に、私も頑張らなくてはという気にさせられます」

 書籍「~生涯女優 河東けい~そんな格好のええもんと違います」は四六判並製218ページ、特価1,800円(税・送料込み)。初版1千部の完売も近く、増刷が検討されているという。

 【申し込み・問い合わせ】TEL:075・661・5741、クリエイツかもがわ

 

【河東けい ひとり語り「母~多喜二の母~」公演】

 

とき:3月21日(水・祝)14時15分開演(13時45分開場)

ところ:コープこうべ生活文化センター2Fホール(JR住吉)

参加費(事前申し込み制・全席自由):

 前売り 大人1,000円、大学生以下・障がい者500円

 当日券 大人1,500円、大学生以下・障がい者1,000円

※2月末現在で前売りはほぼ完売しているため、事務局では「満席の場合は入場をお断りすることもあります」と話している。ご了承ください。

申し込み・問い合わせ:ろっこう医療生協・本部内

 「河東けい ひとり語り『母』」実行委員会事務局

 TEL:078・802・3424、FAX:078・802・1649

 Eメール:nakama@rokko-mcoop.or.jp

 

 




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