兵庫県阪神北県民局は、管内の伊丹市、宝塚市、川西市、三田市、猪名川町と連携し、「ひょうご北摂」エリアの暮らしと魅力が体験できる日帰りバスツアーを11月24日、12月1日に開いた。
大阪、神戸の都心へのアクセスが良く、里山をはじめとする自然にも恵まれた「ひょうご北摂」。今回のツアーは、その住みやすさや暮らしやすさを体感し、移住のきっかけにしてもらおうと企画された。
宝塚・三田を巡る24日のバスツアーには18人が参加し、北摂三田の閑静な住宅街「カルチャータウン」のモデルハウス「風の工房」の見学から始まった。県産材の温もりを生かした和モダンなデザインで、リビングの天井を高くしてリラックス感が演出されている。職人が細部までこだわり抜いた建築に、参加者も興味津々の様子だった。
その後、2017年に開館25周年を迎えた「兵庫県立人と自然の博物館」に移動し、三田の魅力の発信や移住希望者の相談などを受ける「さんだ住まいるチーム」のメンバー4人と懇談会を開いた。「近所の人が野菜をくれる」「学校の教師一人に対する生徒数が少ない」などの話題が飛び出し、地域住民との濃密な人間関係や教育面の充実さをアピールしていた。その後、参加者は館内を自由に回り、約350万年前から約1万年前まで北アメリカに生息していた長鼻類アメリカマストドンをはじめとする化石標本のほか、絶滅の危機に瀕している野生動物の標本や写真を展示する企画展「ひょうごのレッドリスト展」(来年1月5日<日>まで)を鑑賞した。
昼食は「しい茸ランドかさや」で。無農薬で原木栽培されたしい茸を自ら収穫し、すぐにバーベキューで味わう。芳醇な香りとプリプリとした食感を堪能。小学2年生の平田康介君は「熱々でとてもおいしかった。100本食べたいぐらい!」と喜んでいた。
次は、宝塚市に移動。“安産の寺”として全国から参拝客が訪れる「中山寺」へ。中生珠美さんは「この地を訪れるのは安産を祈願して腹帯を授かったとき以来。当時の記憶がよみがえって懐かしい気持ちになりました」と話した。
最後は、日本三大植木産地の一つ、宝塚市山本地区の情報発信拠点「あいあいパーク」を訪問。同センター職員が、接ぎ木の技術や常時3千種類ほどの草花を展示販売していることなどを紹介。参加者は園内を歩き回って、オリーブの木やプリムラ・ジュリアンなどの色鮮やかな花々を眺めていた。
当日夫婦で参加した西宮市の中村道子さん、中村博明さんは「畑のある土地で育ったので、いつかはまた同じような環境で暮らしたいと考えていた。北摂エリアは都会と田舎のちょうど中間のような印象。快適にゆったりと暮らせそうですね」と1日を振り返った。
18人が参加した12月1日は、伊丹・川西・猪名川コースへ。新鮮な野菜や特産品が並ぶ「道の駅いながわ」でショッピングを楽しんだ後、猪名川町環境交流館へ移動。有志のボランティアらが飼育する町内の稀少な水生生物やメダカを観察し、3人の先輩移住者らと交流した。
参加者からの「車が無くても暮らせる?」「知り合いがいなくても大丈夫?」といった質問に、先輩移住者らは「コミュニティバスが充実している」「私も知り合いはいなかったけれど、母親教室やイベントなどで友人が増えたから大丈夫!」と頼もしい回答。町内のイベントや特産品の蕎麦など、猪名川町の魅力を熱く語ってくれた。
大阪市から参加した田中雅典さん、田中陽美さんは、「都会暮らしに飽きたので田舎暮らしに憧れる気持ちがあるが、なかなか踏み込む勇気がなくて今回ツアーに参加した。交通が不便すぎるところは困るので、これくらいの場所だとちょうどいいかもしれない」と話した。
お楽しみのランチは、川西市黒川にある褒美玄米専門店「稲妻家」の健康的な玄米定食。食事中にはオーナーの藤原さんも登場し、玄米にまつわる知識を披露。参加者らは熱心に聞き入り、里山の絶景をながめながら和気あいあいとした時間を過ごした。
黒川の里山を散策しながら、黒川公民館へ。ここは、NHKの朝ドラでロケ地となった旧小学校校舎。参加者は教室内の昔の机やイスを懐かしんでいた。その後は、川西市の紅葉の名所「満願寺」へ。奈良時代に開創され、長い歴史が刻まれた由緒ある寺院で“願いの叶う満願寺”と地元の人々に親しまれている。
最後に、伊丹市の酒蔵通りへ移動。先輩移住者でもある鬼頭さんが運営する「ギャラリーきとう」に立ち寄ったほか、伊丹市文化財ボランティアの会のメンバーらの案内で猪名野神社や旧岡田家・酒蔵などを散策した。
西宮市から参加の箱崎三枝子さんは、「初めて参加したけれど、地域の魅力が分かってとても良かった。移住を考えている友人にもこのツアーのことを教えてあげたい」と満足そうに顔をほころばせていた。