阪神・淡路大震災から17日で25年を迎えます。様々な人たちの力で元気を取り戻してきた私たちのまち。記憶を胸に文化の力で地域をつなぐ2人に迫りました。(西本幸志)
話芸で様々な場を笑顔に!【桂 福丸さん 落語家】
軽妙な語り口のそばで「ワンワン」と鳴き声が響く。神戸市東灘区出身の落語家・桂福丸さん(41)は、尼崎市の「菓子工房ぷちぷちアンサンブル」で昨年12月、犬同伴OKの落語会に登場した。オーナーの湯川美子さん(54)が出演を依頼。2回目の今回も大いに盛り上がった。
小学生の頃、テレビやラジオで落語にハマった福丸さん。私立灘中高から京都大学へ進み、卒業後「舞台に関わる仕事がしたい」とアルバイトを続け、お笑い芸人の養成所に通った。模索の中で知ったのが英語落語。英訳された古典を自分流に書き直し、やってみると、自分に合っていると不思議な感覚に包まれた。落語家になろうと決めた。
24歳で渡米して手応えをつかみ、28歳で四代目桂福団治に入門。東京の音楽事務所と手を組み、落語とクラシックを融合した「寄席クラシックス」を34歳で始めた。「ただひたすら芸を磨いてきただけ。いろいろな出あいがあり、新しいアイデアが生まれたんです」と振り返る。花形演芸大賞の銀賞を受けた実力派。伸びやかな話芸で聴衆を沸かす。
震災は高1の時。「つらい時こそ笑顔が必要」と感じ、東日本大震災の後は福島県などでも高座に上がった。「様々な場所やジャンルと落語を結び、可能性を広げていきたい」
初の長編で人間の生きる力描く【竹本 祥乃さん 映画監督】
震災の記憶を語り継ごうと、西宮を中心に撮影した映画「にしきたショパン」が今春公開される。
神戸市東灘区の竹本祥乃さんが監督を務めた。仕事の傍ら、趣味で漫画を描き続けるうちに映像にも引かれ、ワークショップなどでシナリオ作りを学び、2007年から短編映画の制作を始めた。その後、震災とピアノにまつわる小説を書いた宝塚市のプロデューサー・近藤修平さんに出会い、17年に映画化が動き出した。
主人公は凛子(水田汐音)と鍵太郎(中村拳司)。幼なじみの2人のピアニストが震災などの困難を乗り越える姿を描いた。「悲劇は消せない。でも人間は前に歩む力強さを持っている」と竹本さん。昨年4月から、夙川沿いや日本福音ルーテル西宮キリスト教会、神戸女学院などで撮影を重ねた。
震災があった日は旅行中で、帰るとまちの姿は一変していた。「ガスが使えなかったのを覚えている。日常を壊され、行き場のない怒りを抱えている人もたくさんいました」
インターネットなどで呼びかけ、約600万円の資金が集まった。「節目に何かの形で残したいと多くの方が感じていたのでしょう。気持ちに寄り添える作品にしたい」と最後の編集作業に励む。